2015年設立の日本創発グループは、半世紀近い歴史を誇る製版会社を中心に拡大、現在は46社を傘下に収める。印刷、デジタルコンテンツ、マーケティング、メーカーと四つの事業体が絡んで生み出すシナジー効果こそが、グループの源泉だ。就任3年目を迎える藤田一郎社長に、グループ経営の本質とM&A戦略の極意を聞いた。(Soysauce Magazine Online編集顧問 松室哲生)
あえて「戦略を持たない」M&A戦略
松室:着実に伸びている日本創発グループですが、そもそもの設立の経緯からお聞かせいただけますか。
藤田:日本創発は現在46社からなるグループですが、核になったのは東京リスマチックという製版会社です。ここを核として、印刷に関する事業をグループ化していきました。ただ拡大していく中で、セールスプロモーションやデジタル系の会社を買収していくと、印刷事業を行う東京リスマチックが親会社になることに違和感が出てくるようになった。そこで、15年に日本創発グループを設立し、東京リスマチックを完全子会社化して各社を並列にする形を取りました。今期の売上の7割以上が印刷関連事業です。
松室:日本創発グループという社名の由来はなんですか?
藤田:英語では「Japan Creative Platform Group」と言っています。日本語にしたときに、「ゼロから作り上げ、工夫によって付加価値を生む」という意味合いを込めて「創発」としました。色んな会社さんの素敵なところをつなげる中で、いままでにないものが生まれてくるということを、是非お客様に体験していただきたい。そんな思いを込めています。
松室:まさにそこですよね。46社の集合体が、力を合わせていく。言うのは簡単ですが、難しいことでもあると思います。そのあたりのM&A戦略についてじっくりお聞かせいただけますか。
藤田:あえて言うなら、戦略はないんです。よくあるように、戦略的に自分たちの事業部門を整理してみて、マトリクスに入れていくということは我々もやっています。印刷ならこういう会社があって、デジタルならこういう会社があるけれど、ここがうちには足らない、ということですね。ただし、マトリクスで埋めていく中で、空欄を埋めるために次はどの会社をグループ化しよう、という考え方はあえて持っていないんです。そういう意味では、戦略はあるようでありません。
この会社さんが我々のグループに入ると、こういう面白いことが起こる、とか、お客様が喜んでくれる、というインスピレーションを大事にしています。あとは、我々のグループに入ったときに、その会社さんが伸びて、グループにも影響がある、といったことを想定してグループ化していきます。
松室:色んな企業をグループ化していく上で、一緒になる企業に共通の理念やポリシーはありますか?
藤田:グループ化はお互いの縁だと思っています。我々だけのことを考えるのではなくて、その会社さんが自分たちも成長したいと思っていらっしゃって、我々を使い倒していただきたい。皆さん、それぞれに個性を持っているから面白いのだと思いますが、それだけではもったいない。一緒に仕事をすることで、お互いにもっといいことがある、そういう会社さんであれば素敵だなと思います。
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