【日本創発グループ社長 藤田一郎】46社のシナジー効果を生む最強M&A戦略

46社のシナジー効果を生む工夫

松室:グループ全体をまとめる上で大変な苦労があると思います。藤田さんはどのような工夫をされていますか?

藤田:一番手っ取り早いのは、人と人とが近づいて、一緒に仕事をする環境をつくってあげることかなと思っております。たとえば、近い場所に集まれるように拠点を移転したり、会社間で社員の交換留学をしてみたりですね。退職金の有無や休日日数も会社ごとに違いますが、グループ化したときにほぼ揃えていただきます。

松室:具体的にはどのようにしてシナジー効果を生む工夫をしているんですか?

藤田:たとえば印刷製造事業だと、ある会社は印刷工場をなくし、グループ内の設備を使うことでクライアントとの協議に集中できるようになりました。印刷とデジタルが一緒に動くケースもあり、最近では両部門共通の名刺も作りました。印刷のお客様に対し、デジタルの担当者も一緒にお話をさせていただいて、「このケースは印刷技術を使った方がいい」「デジタル技術を使ったほうがいい」、もしくは「一緒に使ったほうがいい」というように、コミュニケーションを設計しています。

松室:グループ内での新規事業も出てきていますか?

藤田:たとえば、グループ内にはいわゆる「ガチャガチャ」のメーカーがあるのですが、そこにデジタルの技術を加えて「スマイルガチャ」という、目の前でニコッとするだけで回るガチャガチャを発明しました。歯医者さんで導入されているのは主にコインを利用した通常タイプのガチャガチャとなります。販路については、歯科材料等の販売会社と協業でつくりました。このように、流通経路を変えることにより、売り場を増やしていく工夫をしています。今後もいままでは思いもつかなかったような組み合わせができると面白いと思っています。

企業をつないで新しい価値を想像する日本創発グループの強み

松室:結果としてM&Aをたくさんやられているわけですが、誤解されやすいこともあるんじゃないですか?

藤田:そうですね。やはり日本創発グループそのものが何をやっている会社なのかをまだご理解いただけていないのかなと思います。なので、そもそもこの会社の認知を上げていく努力が必要です。営業の前線は東京リスマチックを始めとしたそれぞれの会社がやっているわけで、お客様にとってはその会社しか見えない。そこを変えていくことで、グループのソリューションを理解していただくような努力を、まさに今、やらなきゃいけないということだと思います。

昨年、デジタル部門が集まる展示会に、印刷部門のお客様を呼ぶイベントを開催しました。「グループではこんなことをやっていたのか」というお客様の反応が多く、やはりグループとしての役割をわかっていただけていないことがよく分かりました。こうした試みは引き続きやらさせていただきたいなと思っております。

松室:個々の会社は存在感を示していても、日本創発グループというブランディングがこれからは更に必要となってきそうですね。

藤田:あくまでも日本創発グループというのは、箱でしかありません。なので、日本創発をいくらブランディングしたとしても、実際には営業では通用しないんです。たとえばライザップさんであれば、「健康」や「美」という切り口の元に、グループに入ることでリブランドをするという考え方で入ってくる会社さんが多いと思います。ある意味、我々のグループも、入ってくる会社さんがリブランドをしていただくことによって、その会社さんがまた伸びるような形にできれば面白いのかなと思いますね。

松室:5年後とか10年後のスパンで見て、グループ全体がどうなっていると考えていますか?

藤田:買収は何らかのご縁があれば、やっていくことになると思います。素敵な技術を持っていらっしゃる会社さんはたくさんありますし、印刷ではない分野のお話をいただくことも増えてまいりました。そういうご縁をいただければ、いわゆる足し算をしていくことでの成長というのはあると思います。

ただ、やはりそれにはいわゆるキャッシュフローをきっちりと稼いでいくことも必要です。足し算だけではなく、グループ内で企業と企業をつなげて、新しい付加価値を作り上げる。その努力はずっと続けていきます。

【松室顧問の取材後記】
46社もの企業が一つのグループとして運営されている――。こんな企業グループがあるのかと、最初は興味を持った。しかし、会社の成り立ちを一つ一つ丁寧に聞いていけば、M&Aが主体とはいえ、自然な形でグループが出来上がっていったのがよくわかる。藤田さんの「M&Aの戦略は特にない」という言葉が逆に、「まとまり=強さ」を表しているのではないか。
私は平成の時代に大きく変化した企業環境は3つあると考えている。それはS(シェアリング・インフォメーション=情報共有)、A(アライアンス)、E(エマージェンス=創発)だ。特に創発という言葉は、奇しくも企業名と一致している。同社はまさにこの平成の申し子としての企業活動を展開しているわけだ。可能性を感じる面白い会社である。

◇藤田 一郎(ふじた・いちろう)
1966年、名古屋市生まれ。慶応義塾大学卒業後、野村證券に入社。インベストメントバンキング担当として、顧客企業の事業経営戦略ソリューション業務に従事。退社後、シダックスの常務、大新東の代表取締役副社長を経て、2010年にクラウドゲートの代表取締役に就任。17年3月より日本創発グループの代表取締役社長に就任。

◇松室 哲生(まつむろ・てつお)
元『週刊ダイヤモンド』編集長。ダイヤモンド社代表取締役専務を経て2004年に独立。取材などで1万人以上の経営者と会い、生前のピーター・ドラッカーにインタビューした数少ないジャーナリストの1人。著書に「極秘資金」(小説:講談社刊)、「おもろい会社研究」(日本経済新聞出版社刊)など。

photo by Yasuhiro Takeda

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