ラグビー日本代表も「働き方改革」で世界を目指す!

「多様性」と「休養」でベスト8を目指す、ジェイミー・ジョセフのニッポン強化術

本年9月に日本で開催されるラグビーワールドカップ。
2015年に強豪の南アフリカを打ち破った「日本代表」には、自国開催ということもあって、さらに大きな期待が寄せられている。
指揮官の任は、前回のエディー・ジョーンズからジェイミー・ジョセフにバトンタッチされた。南半球のプロリーグ「スーパーラグビー」において優勝の実績もあるジョセフヘッドコーチには“ベスト8進出”という、未だ果たされていないハードなミッションが課されている。
ここでは、ラグビー日本代表のチーム作りの過程から、ビジネスの場面にも参考にできる視点を紹介していきたい。(ライター:草間 としき)

ラグビー日本代表を支えるのは“多様性”

ラグビー日本代表の試合をみると、メンバーには数多くの外国出身者がいることに気づくだろう。これは、3年の居住期間を満たせば、その国の代表資格を得ることが可能になるという国際ルールが背景にある。

日本では、企業所有のチームで形成される「トップリーグ」がある。
このリーグあるいはその下部リーグに属するチームに、ほとんどの日本代表選手が所属している。神戸製鋼、サントリー、トヨタ、パナソニックなどの日本を代表する企業の多くが、有能な選手と契約し、日本代表の外国出身者の供給源となっている。その多くは南半球出身だ。フィジー、トンガ、サモアのポリネシア系をはじめとして、ニュージーランド、南アフリカ、オーストラリアなどの強豪国からの人材も多い。

彼らは、特に強度が非常に高いポジションで登用される。
例えば、身長の高さや重さが求められるLOや、身体の強さや運動量が必須のFLやNo.8、CTBなどが、このポジションに該当する。
実のところ、もはや彼らなしでは国際的な競争力を維持できないと言えるだろう。

ラグビーはポジションによって体格・キャラクター・身体能力など様々な属性を組み合わせて「戦略的に試合を行う」という特徴を備えるために「ダイバーシティ(多様性)」を具現化したスポーツとも言われることがある。
これは、ラグビーというスポーツの面白さのひとつでもあるだろう。

今や日本の社会も、数多くの人材を海外から迎えている。
「ダイバーシティ(多様性)&インクルージョン(受容)」という言葉も、多くの経営者から聞こえてくるようになった。異なる属性の人材と、どうやって共存していくか、多様な人材を組織に受け入れて、積極的にその能力を発揮してもらうにはどうしたら良いかという、日本社会が直面している問題に対して、ラグビー日本代表は、率先して取り組んできたとも言えるのだ。

実はジョセフヘッドコーチも、1999年ラグビーワールドカップにおける日本代表選手である。そして、日本代表になる前には、ニュージーランドの代表(オールブラックス)の一員として活躍していた。
当時のラグビー界のルールでは、現在とは異なり2つの国の代表資格を得ることも認められていたのである。オールブラックスとして1995年のワールドカップを戦った後に、日本のチームでプレーする中で、日本の文化や習慣を深く理解したという。
この点からは、ジョセフヘッドコーチこそ「多様性の象徴」とも言えるかもしれない。

今、ラグビー日本代表は、国を代表するというプライドよりも、日本代表というチームに入ってプレーするというプライドを大きな幹として「One Team」というスローガンを掲げて強化を進めている。
異なる属性、異なる能力、異なる視点を同じ目標に向けて融合し、一丸となって戦っていくとうのが、基本コンセプトなのだ。

休養からピークへ

日本のラグビー界は、ラグビーワールドカップの自国開催に向けて、日本代表の強化を最優先としてきた。
2016年、トップリーグと世界の強豪とのギャップを埋めるために、南半球のプロリーグ、スーパーラグビーに“サンウルブズ”を編成し参戦。
こうして日本のラグビー界は、一気に過密なスケジュールとなっていく。

国際試合の増加に伴い、代表クラスの選手における身体的・精神的負担は増大した。
また、新たなチームの準備期間やトップリーグの日程調整など各方面に影響が出てきているのが現状である。
現在、強豪のトップクラスの選手たちは、一定期間の休養を与えられることが多くなっている。プレータイムを減らすことで、心身ともにリフレッシュし、燃え尽きや怪我の予防を行い、心身のメンテナンスの充実を狙ったものだ。

今年、ジョセフヘッドコーチをはじめとする日本代表強化スタッフは、この手法を日本代表強化組織にも持ち込み、トップリーグのシーズン終盤からトレーニングキャンプ開始までのおよそ6週間を休養期間として設定した。
リフレッシュから少しずつ強度を高めて、ワールドカップの本番にピークを持っていく予定だ。こうした取り組みは、ラグビー日本代表の「働き方改革」などとも呼ばれ、従来にない強化プロセスとして、その結果が注目されている。

ワールドカップに向けての視点

9月開幕のワールドカップの予選プールで、日本が対戦するのは、アイルランド、スコットランドの伝統ある強豪国、フィジカルが強いサモアやロシアといった油断できない相手となっている。ベスト8に進出できるのは予選プールの上位2チームだ。

前回からは日本の置かれている状況も大きく変化した。
特に、前回大会の南アフリカ戦勝利によって、日本代表はこれまでになく「研究される対象」になったと言えるだろう。
ジョセフヘッドコーチからは、アイルランドやスコットランドに勝利するためには「一発勝負」という言葉が散見される。想像の域を出ないが、警戒を強くする格上から勝利を挙げるためには、地道に実力を上げながらも、大会直前までは、あらゆる手段を講じて自分たちの情報については「撹乱」していくのではないだろうか。

3月現在、日本代表を形成する組織として、ラグビーワールドカップスコッド、ナショナルデベロープメントスコッド、サンウルブズ、ウルフパックと各集団が編成され、そのメンバーの総数はおよそ60名を超えている。
ワールドカップへの登録メンバーは31名のため、集団内の競争も促された格好だ。
各集団では、キャンプと実戦を交えながら、フィジカルやスキルの向上から戦略・戦術の共有が図られ、集団間のメンバーの入れ替えも実施。
厳しい国際試合に適応できる選手層の厚みを拡大しようとしている。

複数のグループが同時に活動すれば、日本と対戦する各国としては、なかなか研究も難かしいのではないかと想像される。さて、本番の日本代表はいかなるチームになるのか。
メンバーの予想も楽しみつつ、ジョセフヘッドコーチの「戦略」に期待して見守りたい。

参考URL:
【ラグビー日本代表ヘッドコーチ・ジェイミー・ジョセフ氏】異文化コミュニケーションは難しくない!
ジョセフHC,日本代表候補合宿合流で好感触、RWC準備に自信

草間 としき(くさま としき)
東京生まれ、ライター。公立高校のラグビー部に所属し、CTBとしてプレー経験あり。
大学卒業後、留学したニュージーランドでラグビーの奥深さに触れ、地元クラブに参加する。以来、国内外のラグビー動向を定点観測中。

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