会社は社員の「夢」の片棒を担ぐ存在
「夢」というのは、「お金儲けをしたい」とか「社会的に認められたい」といった、ぼんやりとした欲望ではありません。社員一人ひとりが持っている、具体的で個別な「夢」。それを大切に「籠」に入れ、社員と会社とが天秤棒で前と後ろを仲良く「担い」で、その達成に向けて前向きに進んでいくイメージです。
社員の「夢」はそれぞれに違いますが、実現させようとすると、少なからずお金が必要になってきます。一方で、会社に在籍している社員たちは、働いた対価として会社から給料をもらっています。言い換えれば、「夢」の実現に必要なお金をくれるのが「会社」なわけです。
お金という少し「下世話」なものが、一つの共通項となるのが会社です。社員がそれぞれに違う「夢」を持っていて、会社も社員とは違う「夢」を持っている。その中で社員と会社が同じ方向を向くということは、本当に難しいことです。しかし、そんな難しさを乗り越えて「夢」を実現させてくれるのが、「1人1人の夢の片棒を担ぐ」ということじゃないかと思えたのです。
もちろん、会社が儲かったら、その「分け前」が社員にちゃんと配分されるという信頼関係も無くてはならないものです。ですから、この「1人1人の夢の片棒を担ぐ」という部分の左上あたりに、「儲かった時は山分け」とも書かれてあります。
会社と社員と株主は「運命共同体」
「儲かった時は山分け」とは、経営の中で必要な「ステークホルダーマネジメント」にも通じることだと思います。ステークホルダーである株主、社員、会社が「みんなで山分けしましょう」という概念です。会社が儲かっても、株主に吸い上げられるだけではいけませんし、会社や社長がそのほとんどを持って行ってしまってもいけません。かといって、社員にばかり分けていても、会社は上手く回って行きません。
基本的には3等分という考え方。その中で、例えば会社が将来の発展のために投資をしなくてはならないということもあるでしょう。そんな時は、会社への配分が当然、大きくなると思います。
ただし、そんな時でもステークホルダーは「運命共同体」なのですから、「今、会社は投資の時期。3等分にはできないけれども、将来必ず、それに報います」という方針や事情を社員、株主と共有することは、とても大事になってくると思います。
「1人1人の夢の片棒を担ぐ」ということと、「儲かった時は山分け」というのが、私の会社の基本的なコンセプトです。私の言う「良い会社」とは、コンセプトをステークホルダー全員が共有しているという事実があって、初めて理解してもらえるものではないかと思うのです。
◇谷口 健太郎(たにぐち けんたろう)
ディーコープ株式会社(DeeCorp Limited)代表取締役社長。早稲田大学大学院理工学部工業経営学科卒。1987年、日商岩井(現、双日株式会社)へ入社。営業としてトルコなどに赴任しプロジェクトを多数手掛ける。2000年、ソフトバンクに転職。2002年、執行役員として同グループ会社のディーコープ株式会社へ転籍。2006年10月、同社代表取締役に就任。2012年6月に代表取締役を退任するが、2014年4月に株主の要請もあり再度代表取締役に就任。