ついにネット広告が伝統マスメディア広告(新聞、雑誌、テレビ、ラジオの4媒体)を上回る時代がやってきました。米調査会社「eMarketer」が発表した「2019年の米国の広告市場」レポートによると、18年のインターネット広告費が前年比19.1%増の1293億4000万ドル(約14兆3000億円)となり、伝統マスメディアの合計を初めて上回る見通しとなったのです。5G時代を控え、文字・写真中心のバナー広告から動画主体のインフィード広告が主流になってきました。最新動向を踏まえ、広告の今後のあり方を考えてみます。(ジャーナリスト 山田順)
なぜ日本では伝統マスメディアが健在なのか?
いま、広告が大きく変わろうとしています。従来の伝統マスメディアから、ネットへのシフトがどんどん進み、米国ではネット広告が全体の54.2%を占めるまでに成長しました。
米国の広告市場がこうなることは、米広告業界では折り込み済みでした。ただ「周回遅れ」の日本では、このニュースの衝撃はかなりのものでした。
日本では、いまだに伝統マスメディア広告がネット広告を大きく上回っています。その差が詰まってきたとは言え、18年は2兆7026億円と、ネット広告(1兆7589億円)の約1.5倍の規模を保っています(電通調べ)。日本では、広告と言えばまずテレビCMが優先で、次にネットという手法が根強いのです。
なぜ、日本ではいまだに伝統マスメディアが強いのでしょうか?それは、伝統マスメディアの発信力がネットの力を上回っているからではありません。高齢化率約30%という少子高齢化社会のためです。
ご存知の通り、高齢者はおしなべて保守的であり、新聞やテレビで情報を得るというライフスタイルを続けてます。若年層と比べて高齢世代の方がネットの利用率が低い上に、おカネを持っていて、購買力も高い。したがって、日本社会ではまだまだ伝統メディア広告のほうが効果を発揮するのです。
間もなく日本でも迎える「ネット」と「伝統メディア」の逆転
しかし、いずれ日本も米国のような状況になるのは間違いありません。高齢世代は徐々に退場していき、デジタルネイティブ世代が増えていくからです。伝統マスメディアにはもうこれ以上発展する余地がありませんし、逆にネットには日々革新的技術が導入されていきます。
また、そもそもマスを相手にする広告においては、伝統マスメディアには大きな欠点があります。それは、消費者の「姿」が正確に見えないことです。新聞・雑誌は部数、テレビは視聴率という大まかなデータしかありません。しかし、ネットはどこの誰かまで、消費者の「姿」が明確で、クライアントはそのデータを見ることができるのです。
さらには「5G」社会の到来もネット広告を後押しすることになるでしょう。5Gの時代になれば動画広告が主流になり、現在のテレビCMを凌駕していくことは容易に想像できます。
ネット広告が伝統マスメディアを逆転する日はそう遠くないのです。