誕生日のメッセージとして伝えたい三井物産元副社長の名言

2019年は己亥(つちのとい)年。この十干十二支についてお話したら、3回分くらいのボリュームになってしまうので、今回は十干十二支はとりあえず置いて、年が明けるたびに、また誕生日を迎えるたびに思い出す言葉(師匠の渡邊五郎さんに教えてもらったこと)を、皆さんと共有したいと思います。

「毎年がベストエイジ」

「毎年、毎年がベストエイジ」という言葉。「死」を迎える宿命にある人間という生き物にとって、「毎年、毎年」を、「毎日、毎日」を、とても楽しく生きられる考え方だなと、妙に納得したのです。これを三井物産元副社長の渡邊五郎さんに教えてもらい、とても「前向きに」生きていくことができるようになると思えたのです。

実はこれ、聖路加国際病院の日野原重明先生が、確か100歳の時におっしゃった言葉だそうです。渡邊五郎さんの師匠にあたる方が79歳になられたとき、日野原先生から「まさにベストエイジだね。いよいよこれから、本当の人生の勉強が始まる」と言われたのだそうです。このことは、渡邊五郎さんが79歳になられたときに教えてもらいました。名言のリレーですね。

79歳になっても今年がベストエイジ。その上に「これからが本番、本当の人生の勉強が始まる」ということを、100歳の日野原先生がおっしゃられていることがとても素敵ですし、「重い言葉だな」と思ったことを覚えています。日野原先生が言われたこの「ベストエイジ」ということを、自分の生き方の中の一つの「筋」としておいておき、毎年誕生日を迎えて一つずつ歳をとるたびに、「心の背筋」を伸ばすために思い起こしています。

「若さ」の強みと「歳をとる」ことで得られるもの

人というのは若いうちは、男性には「若き血潮」と言いますか、たくましくハツラツとした「筋肉」があり、女性には若さという「美しさ」があります。ただ、若いうちには「無謀さ」というか、精神的な「幼さ」であったり、「粗さ」であったり、自分の想いが「わがまま」として出たり、それが時には「大きな失敗」に結びついたりしているものです。

若さによって得られる「強さ」であったり「美しさ」であったり。それは、歳を重ねるうちに、だんだん衰えていく。これは人としての宿命です。その真実をもって、毎年毎年、お正月を迎えるたびに、毎年毎年、自分の誕生日を迎えるたびに、「ああ、今年も一つ歳をとってしまった。若さもなくなってきたなぁ・・・」と嘆いてばかりいることは、あまりにももったいない生き方と言いますか、歳をとるということを「嘆く」ことと、同意にしてしまっているのではと思ってしまいます。

若い時は、自然に備わった「若さ」という強みがあります。でも逆に、若い時に無くても、歳を重ねることで初めて手に入れられる「もの」もあると思うのです。それは「経験」であったり、人に対する「優しさ」であったり、周りの人たちに対する「感謝の気持ち」であったり。

若い時にあった「粗さ」や「幼さ」ということが原因でできなかったこと、すなわち、若い時になおざりにしていた「人に対する優しさ」や「感謝の気持ち」が大切なのだと気づけるようになる、というようなことは、歳を重ねることで新しく手に入れられる「良さ」だと思えるようになったのです。

「若さ」は必ず失われる。代わりに得られる「経験」と「優しさ」

それに気づくと、毎年歳をとって、体の衰えを感じて「失うもの」があったとしても、逆に、頭や心の面で、手に入れられるものが増えていく。人生というものは、そんなバランスの中で進んでいくのだろうと思えるようになったのです。

「毎年、毎年がベストエイジ」ということ、「これからが、本当の人生の勉強」ということは、歳をとって初めて気づくことが出来る。それまでは分からなかった「人生のこと」が見えてくる。そして、それを活かすためには、さらに勉強が必要ですね、ということではないかと思うのです。

「毎年、毎年がベストエイジ」。私にとって、とても勇気を与えてもらえる言葉です。世の中に対して、自分が貢献できることというのは、毎年、毎年変わっていくのだろうと思います。体力がある若いころにできること、体力がなくなっても経験を生かしてできること。自分が世の中で役に立つ役割は、毎年、毎年、そんなことで、少しずつ変わってくるのだと思います。

今までできなかったことがその年に初めてできて、世の中に対してこれまでとは別の「お役目」で貢献することができたら、とても幸せなことだと思えるのです。歳をとってできるようになったことは、きっと若いころにはできなかったことだと思います。もちろん逆のこともあって、若いころに、それこそ「簡単に」できていたことも、歳をとった時には、実行が難しくなっているかもしれません。

でも、そのバランスの中で、その年にできなくなったことがあって、でも新しくできるようになったことがあって。その時にできることを一生懸命実行することが「ベスト」なのです。それが「毎年、毎年がベストエイジ」。そんな風に生きていけたら、楽しく生きていけるように思えませんか?自分が楽しく生きていければ、きっと周りの人も楽しくなります。

こんなわけの分からないことを考えている人は、あまりいないかもしれませんが、私は渡邊五郎さんからこの「ベストエイジ」の話をお聞きして、歳を重ねることが怖いことではなくなり、「日々を大事に」ということが本当に身に染みてくる実感があります。なので、Facebookなどで誕生日のメッセージを送るときには、よくこの「ベストエイジ」という言葉を、添えています。

「若い時にはあっても、歳を重ねて失うものもある。でも、歳を重ねることで手に入れられるものもある。だから毎年がベストエイジ。今年のベストエイジを楽しんでください」と。

◇谷口 健太郎(たにぐち けんたろう)
ディーコープ株式会社(DeeCorp Limited)代表取締役社長。早稲田大学大学院理工学部工業経営学科卒。1987年、日商岩井(現、双日株式会社)へ入社。営業としてトルコなどに赴任しプロジェクトを多数手掛ける。2000年、ソフトバンクに転職。2002年、執行役員として同グループ会社のディーコープ株式会社へ転籍。2006年10月、同社代表取締役に就任。2012年6月に代表取締役を退任するが、2014年4月に株主の要請もあり再度代表取締役に就任。

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