交際相手や夫婦でも該当?田端毅氏の疑い「準強制性交等」とは?

元交際相手の女性から準強制性交等容疑で刑事告訴され、自民党を離党した衆議院議員の田畑毅氏が27日、衆院に議員辞職願を提出した。田端氏と女性は当時、交際関係にあったとされているが、なぜ刑事事件にまで発展してしまったのか?(東洋英和女学院大学講師 秋山千明)

交際相手でも該当する「準強制性交等罪」

今回の田端氏のケースでは、二人が「交際関係」にあったとされている。しかし、女性が主張しているように、同意がないにもかかわらず酩酊状態で性交が行われたのであれば、「準強制性交等罪」に当たると考えられる。

準強制性交等罪は、刑法178条2項において「人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、性交等をした者」と規定されている。つまり、「心神喪失」か「抗拒不能」の状態にある人に対して、性交等をすることである。

ここでいう「心神喪失」とは、精神の障害によって正常な判断能力を失っている状態を指す。たとえば、熟睡、飲酒酩酊、麻酔状態、高度の精神病・精神薄弱等がこれに当たる。「抗拒不能」とは、心神喪失以外の理由によって心理的、物理的に抵抗することが不能又は著しく困難な状態を指す。恐怖・驚愕・錯覚等によって行動の自由を失っている場合がこれに当たる。

判例では、
①著しい精神障害や知的障害のある女性に対して姦淫(福岡高裁昭和41年8月31日判決)
②医師が性的知識のない女性に対し、「薬を入れる」と誤信させて姦淫(大審院大正15年6月25日判決)
③ニセ医者が言葉巧みに嘘を言って、治療行為を受けるしかないと思わせて治療行為を装い、被害者の承諾を得て姦淫(名古屋地裁昭和55年7月28日判決)
④「行為を拒むと(被害者の)身近な人にも危険が生じる」と思わせ姦淫(東京高裁平成11年9月27日)
等が「準強制性交等罪(旧罪名:準強姦罪)」と認定している。

「準強制性交等罪」と聞くと、その罪名から「強制性交等罪」よりも「軽い」と思われるかもしれない。しかし、強制性交等罪の構成要件となる暴行・脅迫に「準ずる手段」を用いたという意味で「“準”強制性交等罪」という罪名になっているだけであって、法定刑は強制性交等罪と同じ「5年以上の有期懲役」という重大な犯罪なのである。

時代で変わる性犯罪の認識

強制性交等罪は『魂の殺人』と言われる。被害者は身体や精神を侵されるだけでなく、生涯そのトラウマを抱え、多くの場合次のステップに踏み出すことが困難となる。まさに人生そのものが踏みにじられる犯罪なのである。性犯罪の厳罰化が進む米国では、性行為中であっても、女性が「やめて」と言ったにもかかわらず行為をやめなければ、犯罪となる。

2017年6月、約110年ぶりに性犯罪をめぐる刑法の規定が改正され、日本でもようやく厳罰化の動きが進みつつある。しかし、性犯罪ではいまだに被害女性を批判する声が絶えない。「ミニスカートを着ているから狙われて当然」「被害者にも落ち度がある」という強姦神話がその典型だ。こうした周辺や外部の心ない声が、被害者を苦しめる「二次被害」を引き起こしている。

また巷では、「夫婦ならば、妻は夫と性交する義務がある」と主張する人すら存在する。強制性交等罪は伝統的に、「男の財産に対する犯罪」と位置づけられていた。妻は夫の「所有物」であるという考えが根底にあった社会では、夫婦間の強姦などあり得ないとされていたのだ。もちろん現代では、夫婦間の「同意のない性交」は、いわゆる「DV防止法」で犯罪と明確に規定されている。

性犯罪規定改正後の最高裁大法廷では判決で、「元来、性的な被害に係る犯罪規定あるいはその解釈には、その時代の社会の受け止め方を踏まえなければ、処罰対象を適切に決することができないという特質がある」ということを明確にした。つまり、もう「古くからの男性優位社会ではいけない」ということだ。(法改正の精神を踏まえ、もう一歩踏み込んで「同意なき性交は全て犯罪とする」と明示すべきだったと筆者は思う)

男性は、自分のその時の感情のままに動くのではなく、相手の女性の感情を考慮し、「確認」することを当たり前としなければならないーーそう「時代」に要請されている。最高裁判決の「その時代の社会の受け止め方を踏まえなければ、処罰対象を適切に決することができない」という一文をこそ、国会議員を筆頭に、新元号時代を生きる日本の「男子」には、重く受け止めてもらいたい。

【参考文献】
北川佳世子「強制性交等の罪・準強制性交等の罪」『法律時報』90巻4号(2018年)55-62頁
柑本美和「強姦罪と準強姦罪」『性犯罪・被害―性犯罪規定の見直しに向けて』尚学社(2014年)148-166頁

◇秋山 千明(あきやま・ちあき)
東洋英和女学院大学人間科学部非常勤講師
1986年和洋女子大学文家政学部被服学科卒業。2001年中央大学法学部編入、06年卒業。14年常磐大学大学院被害者学研究科修士号取得。東京保護観察所港区保護司委嘱、港区更生保護女性会会員。著書に『女性に対する暴力ー被害学的視点から』(尚学社)。

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