相手に情報を伝えるのは「言葉」が全てだ――。そう思っていませんか?一説には、人間のコミュニケーションの93%は「非言語」で行われているといわれています。そこで今回は、優秀なビジネスリーダーが必ず実践している上手な「部下への伝え方」を、非言語の3つの観点からお伝えします。(伝える力【話す・書く】研究所所長 山口拓朗)
伝え方は「非言語」で決まる
たとえば、上司であるあなたが部下に「元気か?」と声をかけたとき、部下が「ええ、元気です」と答えたとします。言葉を額面通りに受け取れば、部下は「元気」ということになるでしょう。
しかし、その部下の声は(いつもより)小さく、どことなく沈んだ声色です。表情も(いつもより)冴えません。上司の問いかけには答えたものの、目がうつろで“心ここにあらず”。この様子を見たら「この部下は元気ではない」と判断するのではないでしょうか。
この判断は、言葉以外の情報に基づいて行われたものです。心理学用語では、「言葉」を「言語情報」、それ以外のものを「非言語情報」と呼んでいます。主な「非言語情報」には以下のようなものがあります。
・声の大きさ
・声のトーン(声色)
・顔の表情
・目の表情
・仕草
・ふるまい
・ジェスチャー
人間のコミュニケーションのほとんどは「非言語」で行われているといわれています。裏返せば、人が人に何かを伝えるときには、「非言語」を使って伝える必要がある、ということです。
優秀なリーダーの伝え方①目を見て話す
連絡、指示、依頼など、上司が部下に情報を伝えるときにも「非言語」が非常に重要です。たとえば、あなたが部下だった場合、次の①と②、どちらの上司に好意を抱きますか?
【上司①】
・目:目を合わせない/伏し目がち/目に表情がない
・表情:表情が乏しい/暗く見える/笑顔が少ない
・声:小さめ/暗い/もごもごしていて聞き取りにくい/抑揚がない/テンポが悪い/語尾が聞き取りにくい(弱い、あるいは、伸びる)/早口/「えー」など不要な口グセが多い
【上司②】
・目:しっかり目を合わせる/目が輝いている/目に表情がある
・表情:口角が上がるなど表情が豊か/明るく見える/笑顔が多い
・声:大きめ/明るい/はきはきして聞き取りやすい/抑揚がある/語尾が聞き取りやすい/適度なテンポ/「えー」など不要な口グセがない
あなたが好意を抱くのは②の上司で間違いないでしょう。上司①は非言語を介して“自分に自信がないこと”や、“部下に興味がないこと”を伝えてしまっています。もしも上司であるあなたに①の要素が多いようなら、②の要素を積極的に取り入れることで、部下が抱く印象に変化が生まれるでしょう。
優秀なリーダーの伝え方②笑顔で話す
とくに気をつけたいのが、“印象”と直結する表情(笑顔)です。上司になると、仏頂面になる、眉間にしわが寄るなど、表情が乏しくなる人が少なくありません。しかし、あなたの表情に笑顔や生気がなければ、伝わるものも伝わりません。人によっては、そのネガティブな表情が気になって、話が耳に入らない人もいるはずです。
あなた自身は笑顔だと思っていても、部下からは笑顔と思われていないケースも珍しくありません。鏡で確かめれば一目瞭然。「自分の表情が硬い(暗い)」ことにも気づくでしょう。
そういう人には、鏡を見るたびに、口角を上げる、目尻を下げるなど、笑顔を作るエクササイズをすることをおすすめします。表情は筋肉で動きます。普段から顔の筋肉を動かしておくことで、表情が豊かになり、笑顔も出やすくなります。