ある程度の規模の会社になると、社員の「人事異動」は付き物です。社員教育や組織活性化の観点からも重要な人事異動ですが、中には異動を不服として「拒否」するケースもあるようです。こうした場合、会社はどう対処したら良いのでしょうか?今回は人事異動について考察していきます。(社会保険労務士 前田敏幸)
そもそも「人事異動」の定義とは?
実は人事異動について、法律上の定義はありません。一般的には、『会社の命令で社員が配置や仕事上の地位を変更すること』という意味合いで使われています。
人事異動と一口に言っても、会社内異動と会社間異動とに分けられますが、ここでは会社内での人事異動について解説します。
会社内での人事異動には、「横」と「縦」の2つのイメージがあります。
<横のイメージ>
転勤
勤務地の変更のことを言います。広く拠点のある企業などの場合、引っ越しを伴うケースも少なくありません。
配置換え
同一の勤務場所(営業所、支店等)の中での勤務内容(所属部署等)の変更を指します。
<縦のイメージ>
昇降格等
昇進・昇格、降格等のことを言います。
職種の変更
総合職から一般職、事務職から研究職などの職種の変更を指します。
このほか、一時的に他の支店などにお手伝いへ行く応援や、休職なども人事異動に含まれるものとされています。
人事異動の目的は?
人事異動は、主に次のような目的で行われています。
①適材適所の人員配置
社員がより高いパフォーマンスを発揮することが目的です。
②企業の戦略
新規事業の立ち上げなど、戦略上の人事異動です。
③ローテーションによる組織の活性化
新しい人材が組織へ入ってくることで、組織全体の活性化が促されます。
④ローテーションによる人材の成長
新しい職場で新たなスキルや知識を身につけさせることが狙いです。
⑤怠慢や不正の防止
長い期間同じ仕事をしていると、その人の仕事について外部の干渉がなくなり、不正が起きやすくなります。不正防止も人事異動の重要な目的です。