多くの企業、特に中小企業にとって死活問題なのが、社員の離職です。なぜ、あなたの会社の社員は次々と辞めてしまうのでしょうか?離職率が高い会社には、7つのある共通点があります。どうしたら社員の離職を防げるのか?実際にあったコンサルティング事例より、現状と対策についてお伝えさせていただきます。(武内コンサルティング代表 武内幸夫)
離職率が高い会社には理由があった!7つの共通点とは?
これまでの経験上、離職率が高い会社に共通することと言えば、以下のような事情が挙げられます。
1.雇用条件が悪い
2.労働環境が悪い
3.福利厚生が未整備
4.社員を成長させる仕組みがない
5.社員を指導する人がいない
6.会社・トップへの憧れがない
7.「同期」がいない
では順番に、理由と解決策を掘り下げていきましょう。
①雇用条件が悪い
中小企業や地方企業の場合、どうしても都内の大手企業の雇用条件には勝てません。急に高給与や好条件を提示しろと言われても無理でしょう。ただし、工夫の余地は十分にあるはずです。例えば、役職が付けば給与総額が上がるとか、昇格すれば給与が上がるといった仕組みなら、比較的容易に作れると思います。全社員の待遇を一律に引き上げることは難しくても、ある一定の条件をクリアしたら、待遇が上がるという仕組みを明確にすることが大切です。
②労働環境が悪い
離職率の高い多くの職場では、働く環境に問題があります。設備や備品が整っていない状態での勤務を強いられていることが常態化しています。また、モノに限らず、「社風」そのものが出来上がっていないことがよくあります。社員は手元の仕事をこなすだけで、「社員教育」ということが現場で行われていないのです。新たな人材を募集するにしても、「PR」できるようなものが揃っておらず、採用活動でも後手に回ってしまうというのが実情です。
③福利厚生が未整備
離職率が高い企業は、福利厚生サービスについても大企業と比較して整っていないケースが多いです。足りないものを挙げ出すとキリがありませんが、かといって福利厚生に予算を回す余裕がない企業も少なくないはず。そうなると、まずは利益を出し続けることが第一目標になります。その上で、自社に合った必要なサービスを整えていくと良いでしょう。福利厚生の充実は、いかに利益を出せるかにかかっています。
④社員を成長させる仕組みがない
会社自体が成長していないので、個々人が成長する仕組みもないケースです。社員は手元の仕事をこなすだけで精一杯になり、会社としても後身を育成する仕組みを作る努力をしていない実態は少なくありません。まずは、人を客観的に評価し、育てる仕組みを整えてみてはいかがでしょうか?評価制度、人事考課表、キャリアプラン、キャリアパス、給与表、手当基準表など、社員が自分の成果を目に見えてわかるようにする仕組みから整備することが重要です。こうした仕組みがないと、社員としても仕事のモチベーションが出ません。能力の高い人ほど、辞めて行くことになってしまうでしょう。
⑤社員を指導する人がいない
これも離職率の高い企業によくある、大きくて深い問題です。中間管理職が育っていないため、社員を教育する役目を社長自身が担っているケースです。総務・経理を社長の奥様が担当している企業にありがちです。ここからどうやって抜け出すかが、会社をワンランク上のステージに成長させる上で重要なポイントです。部下を教える、育てることのできる上司を、一日も早く作って下さい。そして、「教え好き」の社風が根付いた会社を作ること。そうすると、社員は仕事がより面白くなり、離職する人は劇的に減ります。
⑥会社・トップへの憧れがない
社員に「会社が好きですか?」「社長が好きですか?」とヒヤリングすれば、その会社の置かれている状況や内情がすぐにわかります。社員自身が会社や社長を好きでないと、会社が良くなるはずがありません。社長は、社員にとって常に憧れの存在であるべきです。トップが魅力的でないと、社内外での評価は高まりません。もしあなたが社長なら、社員が自慢したくなるような社長にあなた自身がなること。それも離職者を減らすための方法です。
⑦「同期」がいない
中小企業では、大企業のように「同期」社員がたくさんいるということはないはずです。年齢構成も入社時期もバラバラでしょう。そうなると、ちょっとしたことを相談できる仲間がおらず、悩みを貯めてしまったあげく、結果的に突然の離職につながるといったことがよくあります。綺麗なピラミッド型にはならなくても、ある程度年齢の近い同僚がいるということは、社員にとって案外大切なこと。こうした視点からも採用計画を練り直しましょう。
離職率の高さにつながる原因を掘り下げて分析しよう
いかがでしょうか?あなたの会社には、一つでも当てはまることがありましたか?離職率の高さは、単なる数字としての結果だけで終わらせるのではなく、一つ一つの原因を掘り下げて分析することが大切です。
今回は離職率の高い会社の理由を7つ挙げましたが、逆に離職率の低い会社は、社員同士のコミュニケーションが活発な印象があります。昼食時や終業後も仕事について教え合い、積極的に議論を交わしています。社員が自主的に集まってミーティングを開いたり、働きやすい仕組みを作ったりするようになると、理想的と言えるでしょう。
離職率の問題は、表面的なものではなく、実は結構根深いのです。会社そのものをドラスティックに変えないといけないケースもままあります。本文を参考にしつつ、みなさんの会社の離職率が改善されることを祈っています。
◇武内 幸夫(たけうち・ゆきお)
武内コンサルティング代表
大阪府東大阪市出身。神戸大学卒業後、船井総合研究所に入社。17年勤務した後、2007年に独立。中小企業や個人事業主を対象に、現場密着型の経営コンサルタント業を展開。企業再生支援や人事労務問題などで豊富な実績がある。