【インヴィニオ代表 土井哲】デキるビジネスパーソンへの「自分開発講座」
ロジックツリーで失敗しがちな4つの事例
物事を整理するのに役立つ「ロジックツリー」。出来上がったものを見ると「なるほどね、自分でも作れそうだなぁ」と思うのですが、いざ自分でゼロから作ろうとすると結構難しく、うまく作れないばかりか、思わぬ方向に進んで失敗してしまうこともあります。今回は、よくお目にかかるロジックツリーの「悪い事例」を4つ紹介しましょう。みなさんもこの悪い事例のようにならないよう注意してください。
売上が減少しているスーパーマーケットを「お題」としましょう。あなたは外部のコンサルタントとして、売上向上策を提案しなければならない状況にあるとします。
問題解決の第一ステップはまず、「何の売上が下がっているか?」という問題の場所を特定することです。スーパーマーケットの売上が下がっているという現象を「MECE」に分けて、問題の場所を特定してみましょう。<コンサルタントの論理思考「MECE」とは?アップルの売上を例題に解説!>
余力があれば、ぜひみなさんも自分自身でチャレンジしてみてください。
ロジックツリーの失敗事例①新鮮味がない
この例では、売上を商品カテゴリー別に分けています。
まず、生鮮食品、加工食品、飲料・酒類、その他の4つに分けています。そして生鮮食品をさらに肉、魚、野菜、卵、その他と分解しています。
このツリー、何が「悪い」のかわかりますか?
見る限り、綺麗に分けられているように見えます。第8回で「論理的に分解する、というのは誰にも関係性がわかるように分解することだ」と説明しました。このツリーには何も問題があるようには思えません。では、何が問題なのでしょうか?
みなさんが、売上の下がっているスーパーマーケットの店長さんだったとします。自分の店の売上が下がっていて、「何とかしたい」と思っている。コンサルタントを雇ってでも、問題の場所を特定してほしいと依頼したところ、事例【その1】のようなツリーを持ってきて、「こんな分析をしてみました」と言ってきたら、どう感じるでしょうか?
50年前のスーパーマーケットならともかく、現代のスーパーマーケットやコンビニには、レジで打たれた販売情報を管理する「POSシステム」が入っています。事例【その1】のような分解は、単なる商品の分類で、何も間違ってはいないのですが、内部でもつかめる情報です。何も「新鮮さ」がありません。
このような分解であれば、データを使って特定できるので、あまり価値がありません。ロジックツリーは、それを見る相手にとって「新しい価値」を提供できるものでないと、意味がないのです。
ロジックツリーの失敗事例②何を分解しているのか見失っている
こちらは、生鮮食品の売上を単純に商品別に分けるのではなく、単価と販売数量という形で「因数分解」しています。数量が下がっているのか、単価が下がっているのかを見ようというわけです。
このように商品別の分解だけでなく、因数分解なども混ぜることで、違う切り口からアプローチすることはとても有効です。
さて、事例【その2】では、単価に問題があることがわかり、その先を単身世帯向け商品と家族向け商品に分けています。そしてさらに分解を進めていますが、何が問題かわかりますか?
単価の枝を分解しているのですから、「単身世帯向け商品の単価」と「家族向け商品の単価」に分けなければならなかった。しかし、単に「単身世帯向け商品」と書いてしまったために、その後が、「若者向け商品」、「高齢者向け商品」のように、「商品」の話になってしまいました。そしてさらにそれを分解してしまったため、「デザート」という「生鮮食品」とは限らないものが、生鮮食品の枝の下に出てきてしまっています。
生鮮食品の下は、生鮮食品のことが分解されなくてはなりません。ですので「単価」は「生鮮食品の単価」です。そしてその下は「生鮮食品の単価」のことが分解されなければならないのです。
ロジックツリーでは、自分がどのように枝分かれを作ったのか、また何を分解しようとしているのかを意識し、きちんと表記することが極めて重要です。「こんな枝を自分は作らないよ」と思うかもしれませんが、意外にやりがちですので気をつけてください。