東京ガスの電気契約数を3ヶ月で10万件増やした深田恭子の凄さ

なぜ深田恭子はCMで「酷使」されるのか?

最近、よく深田恭子の姿が目に入る。特にテレビCMには色んなカタチで登場する。あるときは「UQ」の美人三姉妹の長女。またあるときはポカリスエットイオンウォーターの人魚。メナード化粧品で微妙な歌声を披露したかと思えば、メガネ姿のOL「デューダ子」にも変身する。われわれの脳裏には、色々なキャラクターの深田恭子が焼き付いてくる。

なにか優秀なクリエイターが、この素材を面白がって起用しているようにも見える酷使ぶりだ。かつてのプロ野球・中日ドラゴンズの大投手、権藤博のように、「権藤・権藤・雨・権藤」のごとく、「深田・深田・恋・深田」みたいな状態に感じる。映画「ヤッターマン」のドロンジョ様役あたりから目覚めたのか?「役」を開き直って楽しむようになった。

「東京ガス」恭子お姉さん。引用:東京ガスCM

賛否両論はさまざまだが、深キョンはどこ吹く風で「嬉々として」広告のキャラクターを演じている。タレントとしての「地肩」が強いのだろう。イメージの幅が広くて深いから、スケールがデカい。クリエイターのオーダーの「その上」を行く結果を出し続けている。

そうなると、製作者側の要求も上がっていく。そう、「悪ノリ」するのだ。
こうなるとCMは面白くなる。何をやっても深田恭子のCMは、どこか安心する。目減りしない、磐石とすら感じる。

問題は実年齢だけだ。アラフォーでこうした「キャラ」がこれだけ務まるタレントさんって、他にそうそういない。深田恭子は「貴重品」なのだ。

深田恭子の魅力が詰まった東京ガスのCM

最近よく流れている「東京ガス」のCMの「歌のお姉さん」役なんかは、まさに深キョンの独壇場。けっこうなGRP(Gross Rating Point=延べ視聴率、CMを流した時間の視聴率を累積した単位)で流れている。それでも飽きられないし、使い勝手がいい。なんでもキョトンと呑み込んでしまうのが、「潜在的意識の怪物」っぽい、イドの怪物か。CM界の「禁断の惑星」は底が見えない。深田恭子はフトコロが深いのだ。

この「東京ガス」CMでは、36歳だとは信じられないくらい『女の子』って感じの深田恭子が、『歌のお姉さん』役で登場する。ここに来て、ますます可愛くなっている感があるし、意外にこういう役柄もしっくりくる。

一方、ネットを中心に、このCMについてのさまざまな見方も挙げられている。東京ガスのCMを見た視聴者の方から挙がっている厳しい声を要約すると

①歌のお姉さんの設定が「痛い」
②服装が昭和で「ダサい」
③歌声が「微妙

具体的なネットの声をまとめると、

・「深キョン東京ガスのCMにポニーテールで登場、とっても美人なんだけどあのかっこに違和感を感じる。」
・「東京ガス、若作りが痛々しく見える。」
・「東京ガスCMの深田恭子、何かに似てるかと思ったら、まさかの『でんこ』ちゃんw」
・「ワンピースの衣装が昭和、ドラえもんみたいだ。」(青は東京ガスのマークの色)
・「東京ガスの深田恭子のCM、かわいいのはよくわかる、ていうか、何となく重い闇、狂気を感じる」

と、SNSの投稿らしく言いたい放題だ。

しかし、こうした批判的な声はあるが、絶賛の声の方がはるかに大きい。
衣装や設定、歌に関しては散々言われているが、実際にはその何倍も「深田恭子さんがかわいい!」という声で溢れている。

・「東京ガスのCMは卑怯だわ~。36歳であの歌と踊りが成り立ってしまう深キョン使うのは卑怯だわ~」
・「東京ガスの深キョン、ここに来て更にかわいくなった」
・「正直なところ、今世界で1番かわいいのはアイドルでも声優でもなく、東京ガスの深田恭子なんだよな。」
・「東京ガスのこのCMに深田恭子を起用した人に拍手をおくりたい」

など、深キョンの「変わらない美貌」に絶賛の嵐だ。

「ノリ」から生まれた「Wキョウコ」のキャスティング

深キョンは泰然自若だ、ぶれない。引用:東京ガスCM

以下は2018年10月の朝日新聞デジタルに掲載された記事の引用だ。

深キョン効果で電気の契約申し込みが10万件増にーー。電力小売り事業に力を入れる東京ガスが、7月から9月にかけて俳優の深田恭子さんをテレビCMに起用したところ、電気の契約本数が倍増した。2016年4月からの電力小売り全面自由化で、東京ガスは新電力で販売量トップを走る。今年7月中旬から9月下旬まで、新規に電気を申し込んだ利用者に、電気代が3カ月間1割引きとなるキャンペーンを実施。テレビCMには深田さんを起用し、深田さんは教育番組のお姉さん役としてコミカルなダンスを披露していた。東京ガスによると、通常は3カ月で約10万件の申し込みがあるが、キャンペーンがあった7~9月の3カ月間は20万件超となった。内田高史社長は11日の記者会見で「深田恭子さんが10万件とってくれたということかな。かなり評判がよかった」と喜んだ。

こうなると「深田無双」だ。クリエイティブスタッフもエンジンがかかり、「ノリノリ」になってくる。

「深田恭子さんと浜口京子さんで″Wキョウコ″なんていかがでしょう?」

1990年代の打ち合わせの「ノリ」で笑い話になっていた「W浅野ネタ」が現実になった。企業が上向きの証だ。深田恭子と浜口京子。比べて見ればわかる。全く同じアングル、同じ構成。筆者がけっこう好きな、アニマルの叫びになんとも言えない顔をする「キョウコ」お姉さんの表情まで一緒の用意周到っぷり。

アニマル浜口に叫ばれて微妙にな表情を見せる深キョンがいい。引用:東京ガスCM

キャラ立ちがすごい。深田恭子の広告として成立しているのがすごい。
「ノリ」から生まれたキャスティングが、媒体に乗り、SNSで拡散し、実生活に影響していく。ある種、日本のCMでは異色のことかもしれない。
しかし可能性を感じる、面白い時代になったもんだ。

UQモバイルにも波及した「Wキョウコ」

このキャスティング効果、知ってか知らずか、美人三姉妹でおなじみの「UQモバイル」にも波及した。アニマル浜口一家が「サーカス団員」(!)としてキャスティングされ、UQ「らしい」シュールな世界を構築している。

ここでも深キョンは、「東京ガスの恭子お姉さん」から「UQの三姉妹の長女」に見事に転換している、深田恭子はぶれない、かぶらない、それでいて深田恭子なのだ。すでに大物の風格すら感じる。

「ハズキルーペ」の余勢を駆った菊川怜が「ソフトバンク」のCMにも同じ設定で登場して話題を呼んだが、今回の深田恭子のCMはそれを凌駕してるような気がする。深田恭子はもはや、「なんでも呑みこんでしまう」CM界のブラックホールだ。

深田恭子はいつの間に、こんなに強力な素材になったのか。新しい意味での「タレントとクライアントのいい関係」が続きそうだ。面白い、面白すぎる、十万石広告。「底しれぬ」深田恭子の深い謎は、深まるばかりだ。

◇遅塚 勝一(おそづか かついち)
茨城県土浦市出身、1963年生まれ。大学卒業後、宣伝会議を経て、テレコム・ジャパンに入社。博報堂への出向の後、独立。CMディレクター、コピーライター、演出家として活躍中。 年間数多くのCM制作を手がける傍ら、ドラマ、映画、ラジオの企画や脚本にも携わっている。インタビュー・構成を担当した「時代とフザケた男」(小松政夫・著)が扶桑社より絶賛発売中。

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