ビジネスパーソンは、状況や相手に応じた最適な言い回しができるだけで、相手の信頼をグッと高めることができます。今回は、取引先や上司にお願い事をしなければならない場面や相手の体調を気遣うケースなど、さまざまなビジネスシーンで使える「大人なフレーズ」を具体的に紹介していきます。(伝える力【話す・書く】研究所所長 山口拓朗)
ビジネスで「お願い」が通りやすいスマートな言い回し
ビジネスシーンでは、どんな目上の相手に対しても、こちらの要望をお願いしなければいけない場面も少なくありません。そんなときにスマートな言い回しで「お願い」ができると、受け入れてもらえる確率が上がります。
まず、謙譲表現である「○○いただきたく」は、書き言葉で使い勝手のいいお願いフレーズです。
○○には「ご善処/お力添え/ご助言/ご助力/ご忠告/ご指導/ご鞭撻/ご協力/ご承認/ご了解/ご高説/ご指南」など、相手に望む言葉を入れます。
「ご善処いただきたくお願い申し上げます」
という具合です。ちなみに「善処」は〈適切に処理する〉、「助力」は〈相手が手伝う〉、「鞭撻」は〈戒めながら強く励ます〉、「高説」は〈優れた意見〉、「指南」は〈教え導く〉という意味です。
もちろん、必要に応じて「忌憚のないフィードバックをいただきたく」「お知恵を拝借したく」「ご登壇いただきたく」「日程をご調整いただきたく」のように、具体的にお願いする内容を示すことも大切です。
「お願い」は「あなたしかいない」と思わせることが大事
「○○いただきたく」よりも敬意を強めたいときは、「○○を賜りたく」という表現を用いてもいいでしょう。「賜る」 は〈受ける/聞く〉の謙譲語で、「ご高評を賜りたくご案内差し上げました」のように使います。
また、率直な意見をもらいたいときは、「忌憚(きたん)のない〔ご意見/アドバイス〕をお聞かせください」のフレーズが重宝します。「忌憚」とは〈遠慮して控えること〉。そこに否定語の「ない」を組み合わせることで〈遠慮しないで!〉という意味の言葉になります。
相手から「イエス」の返事をもらうためには、相手の自己重要感を高めることも大切です。「自己重要感」とは、「自分は価値ある存在である」と感じる気持ちのこと。心理学の見地からも、コミュニケーション時に相手の自己重要感を満たすことが有効とされています。
お願いをする際であれば、
「△△をお願いできるのは○○さんしかいません」
「頼れる人が○○さんしかおりません」
「○○さんであれば、きっと最高の仕事をしてくれると思いまして」
のようなフレーズが効きます(ただし、いやらしい言い方にならないよう注意しましょう)。いずれも自己重要感が高まる言葉につき、相手が「機嫌が良くなる→お願いを受け入れたくなる」確率が高まります。