「お疲れ様でした」に一言加えるだけで好印象を残せる言い回し
「大人な言葉遣い」ができる人は、さりげない別れ際のあいさつでも相手に好印象を残すことができます。別れのあいさつの定番は「失礼いたします」「お疲れ様でした」などですが、そこに
「また次回〔お会いできる/お目にかかれる/ご一緒できる〕機会を楽しみにしております」
と添えるだけで、相手はご機嫌になり、あなたのことを記憶に深く刻むでしょう。行動であれ言葉であれ、「丁重にもてなされること」は多くの人にとって嬉しいことなのです。
初対面の相手との別れ際であれば、「お会いできて嬉しかったです」や「お話しできて光栄でした」と伝えることで、相手に与える印象がグっと良くなります。
「〔これをご縁に/これに懲りずに〕今後ともよろしくお願いいたします」
「末永く(お付き合いいただけますよう)よろしくお願いいたします」
のような、継続的な関係を希望する言葉も「大人な言葉遣い」といえるでしょう。相手から教えを請う立場であれば「今後とも、よろしくご指導ください」や「引き続き、ご教授いただけると嬉しいです」などのフレーズも効果的です。
デキるビジネスパーソンが使う「ありがとう」の言い方は?
お礼や感謝の言葉を示すときにも「大人な言葉遣い」が役立ちます。お礼といえば「ありがとうございます」がスタンダードですが、誰もが使う言葉だけに、この言葉だけで深い謝意を伝えることはできません。
その直前に「○○いただき〜」と添えると、より感謝の気持ちが伝わりやすくなります。○○には
「ご尽力/ご協力/お力添え/ご助言/ご快諾/お口添え/お心配り(を)/ご配慮/ご足労/お骨折り/ご教示/お引き立て/お心遣い(を)」(※)
など、状況に合った言葉を入れます。想像以上によくしてもらったときは、さらに、これらの言葉の直前に〈もったいないくらい〉という意味の「過分な」や「身に余る」を付け加えましょう。
「〔過分なお心遣いをいただき/身に余るご提案をいただき〕、誠にありがとうございます」
という具合です。
お礼の言葉といえば、「感謝」という言葉も重要です。オーソドックスな言い回しは「感謝しております」「○○いただき、感謝しております」です。(○○には数行前に紹介した各種ワード※が入ります)
なお、あらたまったお礼文やお礼メールを書くときには、「感謝しております」の直前に
「ご厚情に/ご芳情に/ご高配に/ご温情に」
などの言葉を組み合わせてもいいでしょう。「ご厚情」は〈深い情けや思いやりのこと〉、「ご芳情」は〈相手の心遣いや親切心を敬う語〉、「ご高配」は〈相手の心配りを敬う語〉です。状況に応じて使い分けましょう。
ほかにも、
「感謝の言葉もありません」
「恩に着ます」
「○○さんのお陰です」
「感謝してやみません」
「〔感謝/お礼〕の言葉もありません」
「ただただ〔感謝/お礼〕の気持ちでいっぱいです」
など、お礼や感謝を伝えるフレーズには、さまざまなバリエーションがあります。
信頼構築に必要な「正しく、大人な」言葉遣い
「大人な言葉遣い」は、決して“見せかけの飾り”ではありません。相手を不快な気持ちにさせず(それどころか、いい印象を持ってもらい)、コミュニケーションを円滑にし、なおかつ、強固な信頼関係を築いていくために必要な“心配り”です。「言わなくても伝わるだろう」という考え方では、信頼関係を築くのは難しいでしょう。“以心伝心”という言葉で逃げてはいけません。どんな思いも、言葉にしなければ、相手に届けることはできないのです。
気持ちや感情、情報などを、誤解なく相手に伝えるためには、さまざまな言葉を見比べながら、そのつど最適なフレーズをくり出す必要があります。もちろん、フレーズをくり出すためには、その大前提として自分のなかにフレーズがストックされていなければいけません。本記事が、「大人な言葉遣い」のインプットの場としてお役に立てば幸いです。
◇山口 拓朗(やまぐち・たくろう)
伝える力【話す・書く】研究所所長。出版社で編集者・記者を務めたのちに独立。22年間で3000件以上の取材・執筆歴を誇る。現在は執筆活動に加え、講演や研修を通じて「好意と信頼を獲得するメールの書き方」などの実践的ノウハウを提供。著書は『そもそも文章ってどう書けばいいんですか?』(日本実業出版社)、『伝わるメールが「正しく」「速く」書ける92の法則』(明日香出版社)など国内外で20冊以上。