【インヴィニオ代表 土井哲】デキるビジネスパーソンへの「自分開発講座」
ビジネスパーソンに必要な「ROA」改善への意識
前回、株主はROEを重視しているという話をしました。
ROEは株主の視点からみた「利回り」ですが、これは「ある年」における利回りを表したものにすぎません。長期で株式を保有する株主にとっては、短期的な利回りもさることながら、自分の持分である「企業の株主価値」も重要です。
企業の株主価値とは、文字通り、株主にとっての企業の価値のことです。株主としては、これを最大化したいわけです。
今回は、企業の「株主価値」とは何か?
それを高めていくには「何をしなければならないのか」について解説していきます。
企業の株主価値の算出については、以下のサイトなどをご覧頂ければと思いますが、基本的には「企業価値」から「負債価値」を差し引いたものになります。
https://mba.globis.ac.jp/about_mba/glossary/detail-12115.html
企業は負債か資本という形で資金調達しますが、株主以外の資金である「負債部分」を差し引いたものが「株主価値」になります。
では「株主価値」を計算する基となる「企業価値」とは何でしょうか?
先のサイトで説明されている通り、企業価値は「企業が将来どれだけのキャッシュフローを生み出すかを『現在価値』で評価したもの」です。キャッシュフローとは「現金」の出入りです。企業がどれだけ現金を生みだすのか、そこに着目したのが「企業価値」です。
【ちょっと用語解説】
先ほどの「現在価値」を細かく説明すると長くなるので、専門書や専門のサイトにお任せしたいと思いますが、基本は、今日の1万円と1年後の1万円の価値は違うということです。
今日手元にある1万円は「運用」することが可能なので、金利を生み出します。
仮に金利が1%であれば、今日の1万円は1年後に10,100円になります。
逆に、1年後の1万円の現在価値は1万円/1.01=9,901円と考えようということです。
これが「現在価値」という概念です。
さて、企業財務においては、キャッシュフローには「営業キャッシュフロー」「投資キャッシュフロー」「財務キャッシュフロー」の三種類があります。
設備投資をしたり、他社の株式を購入したりすれば、お金が減るので「投資キャッシュフロー」はマイナスになります。設備を売却したり、投資した株式から配当を受け取ったりすれば「投資キャッシュフロー」はプラスになります。また、銀行から借入をしたり、社債を発行して資金調達したりすれば「財務キャッシュフロー」はプラスになり、借金を返済したり、金利を支払ったりすれば「財務キャッシュフロー」は、逆にマイナスになります。
ここでは、複雑な話は一旦横に置いて頂いて、「キャッシュフローの増加を大きくすれば企業価値は高まり、キャッシュフローの増加が小さく、もしくはマイナスになれば、企業価値は下がる」ということだけを記憶しておいてください。
キャッシュフローを最大化して「企業価値」を向上させるには、どうすればよいか?
これを考えるのに役立つのが、第5回で紹介したROAです。ROA(Return on Asset)は分子が営業利益、分母が総資産の分数で表されることを覚えていますか?
「営業利益」=「営業キャッシュフロー」ではないのですが、営業利益をあげることは「営業キャッシュフロー」を高めることにつながります。
一方、総資産を減らすことは「投資キャッシュフロー」や「財務キャッシュフロー」を増やすことにつながりますので「ROAの改善」を意識することは、キャッシュフローを増加させて、結果「企業価値」を高めることにつながるのです。
ですので、みなさんには「利益貢献意識」を持ってくださいとお願いしましたが、より正確には「ROAの改善」を強く意識して頂きたいと思います。
→具体的に「ROAの改善」を考えることが、ビジネスパーソンの最重要な仕事!