さみしくなるか「お正月」。「CM皇太后」だった樹木希林と富士フイルム。

テレビには「世間の事情」が詰まっている! 遅塚勝一のお茶の間マーケティング講座 第5回

デジタル広告の急成長のなか、未だに最大の広告メディアであるテレビ。
そのCMにはさまざまな「世間の事情」が詰まっている。
テレビCMには大きな広告費が必要となるだけに、大人のさまざまな思惑と狙いが反映されていると考えて良いだろう。現役CMディレクターの遅塚勝一が、テレビ番組やCMの背景を読み解きます。

「美しい方はより美しく、そうでない方はそれなりに」

このフレーズを覚えているだろうか?
1980年に放送されていたフジカラープリントのCMで、樹木希林さんと岸本加世子さんのやり取りで出てきたセリフ。もともとは「美しくない方も美しく」というコピーを「そんなわけないじゃん、そんなの嘘だ!」とかけあって「それなり」とセリフを変えたそう。

富士フイルム1980年「それなり」
https://youtu.be/GChoLC8bhpk

樹木希林さんは、広告が好きだった人だと思う。
生前の言葉の端々から伺えた。
「私が役者で続いてるのは、CMというものがあったからなのよ。いまから55年前に役者をはじめたとき、CMをやる役者なんて下の下だと。芝居が荒れるとか、ちゃんとした役者になれないとか言われて。その中で、全然舞台とか映画とかテレビとか興味がないから、『CMいいじゃないの』って言ったのが私の役者人生のはじまりだから」(『コピー年鑑2016』別冊付録より)。

「CMの女王」って誰かが言ったら「いや、女王じゃないよ、皇太后」って。
女王って、恥ずかしいから皇太后。よく考えたら「皇太后」の方が偉いんだけど(笑)なんか当たってる気がしてね。良いでしょ?ちゃっかり自分から言う(笑)。そのキッパリとした態度に、樹木希林さんの、人としての「潔さ」がのぞく。

9月15日にご逝去された樹木希林さんは生前、富士フイルムのTVCMに268作品も出演されていた。当時、フジカラープリントのCMは、年末シーズンに新作が放送されることが多く、樹木希林さんが出演するフジカラーのCMを見ると「あぁ、もう年末なんだなぁ」と実感していた記憶がある。すでに風物詩だった。

樹木希林さんの生前の活躍をしのび、富士フイルムの過去のTVCMの一部が、期間限定で公開されることになった。
時代の一瞬を駆け抜けて、消費されていく運命のTVCMとしては異例のことだ。

フジカラーCM(1978~2018)
https://youtu.be/jjrXYSFBywg

「私の代表作は何かって? 私はね、ないのよ。助演どころかチョイ役、チョイ役って渡り歩く“チョイ演女優”できたもんだから。しいて言えば『海よりもまだ深く』かしら。そこ、カギカッコでくくってしっかり書いといてね(笑)」

→細かいところに集中しないで、ものごとの大きなところを俯瞰するという樹木希林の演技方法

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