ハードブレグジットが引き起こすリーマン・ショック級の経済危機

金融市場に与える壊滅的な影響

あまり知られていないことかもしれないが、現在の金融システムの中で「デリバティブ(金融派生商品)」の重要性は、我々の想像をはるかに超える規模になっている。デリバティブとは、価格変動のリスクを最小限に抑えるために創設された金融システムのひとつだ。株式や債券、金利、為替、商品(金、原油)など、あらゆる金融商品に派生する。

2008年のリーマン・ショック時に大きな混乱を招いたのが、このデリバティブ商品の不透明さだった。クレジット(信用)を売買の対象にしたクレジットデフォルトスワップ(CDS)や、不動産ローンを対象とした不動産担保証券といったデリバティブの複雑な仕組みは、金融市場の人間でさえもきちんと理解できていなかった。そんな不透明さが100年に一度の経済危機に発展してしまったわけだ。

今回のブレグジットで重要なのは、現在の金融デリバティブの仕組みが、ロンドンを基点に生まれてきたという現実があることだ。実際に、世界の「店頭デリバティブ」の清算機関(クリアリングハウス)の9割は、ロンドンに存在している。

つまり、通常の金融派生商品や金利スワップ、CDSなど、上場先物を除いた店頭デリバティブ取引の清算機関の大半がロンドンに集中しているのだ。この背景には、リーマン・ショックで不安定になったデリバティブ取引の教訓として、世界中の金融当局が店頭デリバティブの取引を「清算機関」を通して行うように義務付けたために、ロンドンに集中してしまったという事情がある。

デリバティブの清算機関は、企業が倒産したり解散したりする場合に、清算業務には欠かせない存在だと言われる。仮にハードブレグジットになった場合、こうした店頭デリバティブの精算機関は、EUの法律に抵触するのを避けるため、欧州企業に契約解除を通知する必要が出てくる。しかし、デリバティブの契約解除は3ヶ月前がルールだ。ブレグジットが実施される19年3月30日までに解約するには、その3ヶ月前、まさに現在の18年末あたりが限界になってくる。

イングランド銀行は「EUはデリバティブの清算機関を守る措置を取ると約束しているものの、その内容をきちんと示さなければ、店頭デリバティブの想定元本6000兆円の資金が不安定になる」と警告している。リーマン・ショック時のデリバティブの想定元本は約6200兆円と言われた。言い換えれば、リーマン・ショック級の金融危機がハードブレグジットを機会に再び襲う可能性があるのだ。

ブレグジット交渉のゆくえは?➡

ページ:
1

2

3

月間人気記事ランキング

連載・特集

松下幸之助

PR

  1. EnCube(インキューブ)の効果は嘘?日本人が英語を話せない本当の理由
  2. 「転職させない」転職エージェントが考える真のキャリアアップとは?
  3. もしドラ 村瀬弘介 もし現代の経営相談をドラッカーが受けたら

《絶賛販売中!》Soysauce Magazine 創刊号

ソイソースマガジンオンライン
PAGE TOP