③民主党に振り上げた拳をどうおろしていくのか
「ロシア疑惑」や相続税問題、司法妨害など、トランプ大統領が抱えているトラブルの数は数えきれない。それでもメディアに対しては「フェイクニュース」と指摘して攻撃的な言動を繰り返し、民主党に対しても強硬な姿勢を貫いてきた。
しかし、中間選挙で民主党が下院を制したことで、方向性が一致しているインフラ整備関連の法案以外は、ことごとく否決される可能性が高い。言い換えれば、民主党の理解を取り付けなければ、どんな法案も議会を通過しないことになる。
追加の減税法案や2019年度の予算案なども、民主党との交渉が不可欠だ。「トランプ流交渉術」がどこまで通用するだろうか。
また、もし弾劾裁判の発動が下院で可決されれば、大統領としての職務に大打撃を与えることになる。かつてホワイトハウス実習生との不適切な関係で弾劾裁判にかけられたクリントン元大統領には、「国民の関心をそらすために第三国に空爆をした」という疑惑がある。そんな事態が、日本に隣接する北朝鮮を空爆の対象として繰り返されないことを祈るばかりだ。
④注視したい財政赤字の拡大
かつてのレーガン政権は、大幅な減税と軍備増強を実施し、「双子の赤字」(財政赤字と経常赤字)をつくった。結果的には「プラザ合意」でドルを大幅に切り下げ、日本のバブル景気を始めとした諸外国に大きな影響を与えた。
ジョージ・W・ブッシュ政権下では、米同時テロ事件やイラク戦争に見舞われ、やがてはリーマン・ショックの原因となったゴルディロックス(ぬるま湯)景気を発生させた。
トランプ政権もまた、大幅な減税や軍備増強、インフラ投資の拡大を財政赤字増大覚悟で推し進めている。このまま財政赤字が膨らめば、かつてのプラザ合意やリーマン・ショック級の景気後退が全世界を襲う可能性があるとも考えておいたほうが良さそうだ。
ポピュリズム(大衆迎合主義)や保護貿易主義が蔓延する現在の世界情勢を、「第二次世界大戦に突入した1930年代と似た状況だ」と警告するエコノミストも少なくない。トランプ政権の行く末を、世界は固唾をのんで見守り続ける必要がある。
◇岩崎 博充(いわさき・ひろみつ)
経済ジャーナリスト
雑誌編集者等を経て1982年に独立し、経済、金融などのジャンルに特化したフリーのライター集団「ライトルーム」を設立。雑誌、新聞、単行本などで執筆活動を行うほか、テレビ、ラジオ等のコメンテーターとしても活動している。
『老後破綻 改訂版』(廣済堂出版)、『グローバル資産防衛のための「香港銀行口座」活用ガイド』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『日本人が知らなかったリスクマネー入門』(翔泳社)、『「老後」プアから身をかわす 50歳でも間に合う女の老後サバイバルマネープラン! 』(主婦の友インフォス情報社)、『はじめての海外口座』(学研パブリッシング)、など著書多数。近著に『トランプ政権でこうなる!日本経済』(あさ出版)がある。