トランプ政権が発足して約2年。環太平洋連携協定(TPP)やパリ協定、中距離核戦力(INF)全廃条約からの離脱・脱退を始め、トランプ大統領はこれまで、国際的枠組みからの逸脱を半ば強引に進めてきた。当初は”暴走”する大統領と距離を置いていたが、最近では「トランプ人気」に乗る共和党の議員も少なくない。先の中間選挙を機に今後の政権運営を考えると、4つの問題が浮かび上がってくる。(経済ジャーナリスト 岩崎博充)
①「米中貿易戦争」のゆくえ
12月1日の米中首脳会談で、米国は中国への追加課税を猶予すると決めた。「米中貿易戦争」は一時休戦となった格好だが、トランプ大統領は取引がまとまらなければ、2,000億ドル(約22兆円)相当の中国製品に対する関税を、10%から25%に引き上げるとの見通しを示している。これは、中国の輸出量のほぼ半分に相当する金額だ。
この「貿易戦争」が今後、どのように展開するのかは不透明だ。しかし、中国からの報復関税はトランプ大統領の支持基盤への直接的な攻撃にもなるため、長期間の貿易戦争は難しくなるとの見方が強い。いずれは何らかの形で妥協点を見出す必要が出てくるだろう。
②真価を問われる移民政策
「メキシコとの国境に壁をつくる」と宣言していたトランプ大統領。しかし、11月の中間選挙では、新たに米国国境を目指して行進する「移民キャラバン」の問題が争点になるなど、移民政策は国家運営の根幹に当たる大きな問題だ。
中米からの移民キャラバンは数千人がメキシコとの国境に集結して、米国の出方を模索しているところだが、米国が受け入れる気配はなさそうだ。米国への不法入国者数は年間50万人とも言われる。軍を投入して移民排斥のパフォーマンスをアピールするトランプ大統領だが、こうした事態をいつまで維持できるのか。
米国内に難民申請者として受け入れ、帰る国のある人間には帰国させる、という穏便な手法がスタンダードだが、トランプ政権は難民申請すらさせないという強硬姿勢を取り続けている。まるで、日本の難民政策をお手本にしたかのような方法だが、中間選挙の結果を踏まえ、移民に対する強硬な姿勢を見直す可能性がある。
これまでは、難民が大量に発生しているような国には、「世界の警察官」たる米国が介入して治安を正常化させてきた。しかし、「リーダー=主導国」なき「Gゼロの時代」では、そんなわけにもいかない。トランプ大統領の真価が問われている。