「ずっと変わらないCM」には何を思い浮かべますか?
昭和天皇が伊東を訪れた際、「ヨイフロ(4126)のハトヤは、ここかね?」と聞いた、という逸話がある『ハトヤ』のCM。棟方志功のパッケージで有名な「うまい、うますぎる」の『十万石まんじゅう』。関西のトラウマCMナンバーワン、不気味な歌声と赤ちゃんの顔を延々と流していたモスクワのお菓子『パルナス』。俺らの子供のころ、夏休みに流れていた「そーだよ、そーだよ、ソースだよ!」の『サッポロ一番ソースやきそば』。このあたりが、記憶に残っている感じでしょうか。
『ハトヤ』のブリを抱えている子役の子は、伝説の夕方の帯番組『夕焼けニャンニャン』のとんねるずの「君の名は」というコーナーに「ハトヤ君」という名前で、すっかり大人になってからもテレビ出演していた。そこでは、吉野家のCMで「やったねパパ、明日はホームランだ!」の子が「吉野家君」という名前でコンビを組まされていた。
石橋貴明に「おいハトヤ、コノヤロウ!!吉野家、バカヤロウ!!」と突っ込まれていたっけ。ハトヤ君も吉野家君ももう50歳過ぎだろうし、パルナスの赤ちゃんは還暦過ぎだろうな。
私たちは日常的に、ありとあらゆる宣伝を見聞きします。だから、興味の無い広告は、脳が自動的に無視するようになっています。
毎日テレビで放送される企業CMは、企業ブランドを視聴者に浸透させる重要な宣伝窓口。より良いイメージを視聴者に「定着」させるための、重要なブランディング材料といえます。そのためには「飽きさせず」無視されないために、次々と新たに有名タレントを起用し、時代や流行を取り入れ、さまざまなアイキャッチを採り入れた新鮮なCMの大量投下で、イメージ定着を図るのが当然の戦略であると考えられています。
例えば『au三太郎』や『ソフトバンク白戸家』、そして『サントリーBOSS』などの“シリーズ化”が、そのメジャーCMのメインストリームといえます。
しかし、2018年現在、そういった新しい派手なものを利用する流れと、逆行しているCMもあるんですね。それは『タケモトピアノ』のテレビCMです。
いつまでも同じ映像内容で放送する、いわゆる「変わらないCM」です。あえて、この手法を貫き通す理由は何なのか?実は、ロングランCMのインパクトは計り知れず、意外な未知の世界、われわれは知らず知らずの間にイメージを刷り込まれていたりする。視聴者には「伝えたいことの本質」とは違うところで、イメージ定着に成功しており、この企業CMは「変わらないCM」の「誰もが知っている」という効果の証左なのです。
→筋金入りのロングランCM『タケモトピアノ』の謎