【インヴィニオ代表 土井哲】デキるビジネスパーソンへの「自分開発講座」
若手社員に希薄な「売上」と「利益」に貢献する意識
性格特性・動機、認知の話に続いて、今回からはマインドセットの話をします。<第三回はコチラ>
マインドセットとは、どのような意識、姿勢、気構えで仕事に取り組むことが大事か、ということです。
仕事とどのように向き合うかは「極めて個人の価値観に関わる部分」なので、第三者が「こう考えるべし」と決めつけるようなことは、最小限にとどめるのが適切でしょう。
しかし、読者の多くがビジネスパーソンであるという前提を置くと「『売上』を上げることを通じて、利益に貢献する意識を強く持つ」という原則は、ぜひ理解して欲しいと思います。
みなさんが、どこまで明確に自覚して決断したかは分かりませんが、(起業するのではなく)会社という組織に社員として所属して働き、給与を受け取るという道を選んだ以上、これだけは「強く意識すべき原則」であると思うからです。
当たり前の話なのですが、給与の原資は「利益」です。
「利益」が増加すれば、賞与なども含めて給与として受け取る金額は「増やせる余地」が出てきますが、逆に「利益」が減少すれば、収入も減る可能性が高まります。
自分が仕事を通じて、どのように会社の「利益」に貢献しているのかが、説明できるようになってほしいですし、私はこれだけの「利益」に貢献しているので、これだけの金額の「給与をもらう正当性」がある、と主張できるようになってほしいのです。
「利益」とは、売上から費用を差し引いたものですので、まず「売上」を上げることについて考えてみましょう。
実は最近、20~30代の若い社員の「売上」を上げる(稼ぐ・儲ける)意識が薄まっているのではないかと、感じる出来事がありました。あるクライアント(製造業)で、若手中心に「新規事業を創ろう!」というプロジェクトがあったのですが、面白いアイディアを出してくれた人を選抜して「面談」を行ったところ、なぜその事業をやりたいのか、その事業がどれだけ社会に貢献するのかについて「熱い思い」を語ってくれたのは良いのですが、「それで、この事業でどのくらい『売上』が上がるのですか?」と聞くと、「えっ?『売上』ですか・・・、それはまだ考えていません」という答えが少なくなかったのです。
しかもこれは、1社だけでなく、複数の企業で似たような体験をしました。
そこで質問です。「売上」とは何でしょうか?
売上を別の言葉で説明できますか?会社が売り上げた商品の総額?
もちろん間違ってはいませんが、少し深掘りしてみましょう。
売上は単純化すると「単価×数量」という数式で表されます。「単価」というのは、相手(お客様)が「払っても良い」と考えて実際に払ってくれる金額です。
相手(お客様)が、みなさんの会社の商品(製品やサービス)一単位に、どれだけ価値を感じてくれているのかを表しています。定価というものは、あくまでもメーカーの「希望小売価格」に過ぎず、実際には、売れた価格がこの数式における「単価」です。
「数量」は、世の中でみなさんの会社の提供する商品に価値を感じて、お金を払ってくれる人、あるいは会社の数と考えられます(AKBファンのような、単一顧客の大量購入が無い場合)。
つまり「売上」は、その会社が商品を通じて、どれだけの価値を世の中に提供しているのか、その会社が提供している「価値の総額」ということになります。
もし売上が下がっているということであれば、単価が下がっているか、数量が落ちているか、あるいは両方が起こっていることになります。
「単価」が落ちているのであれば、世の中はみなさんの会社の商品に以前ほどの価値を感じなくなっているということであり、また数量が落ちている、ということであれば、価値を感じてくれている人が減少している、ということを表しています。ですので「売上」が下がっているということは、大変に深刻な問題なのです。
身近な例を挙げれば、日本の新聞社の売上は2012年度あたりをピークに、右肩下がりを続けています。どんなに会社側がうちの記事には「価値がある」と訴えても、「売上」を決定するのは買い手側です。