社会に出てから、「自分の言葉遣いは大丈夫だろうか?」と焦り始める若手ビジネスパーソンは少なくありません。言葉遣いの中でも、とくに使い方に苦労するのが「敬語」ではないでしょうか。他者を敬う文化が育まれてきた日本社会で、敬語はその“象徴的なツール”として重要な役割を担っています。一方で、その多彩さと複雑さゆえ、適切ではない使われ方をすることが多いのです。(伝える力【話す・書く】研究所所長 山口拓朗)
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できなければ「いけない」敬語
「敬語が少しくらいできなくても、なんとかなるだろう」と決めつけるのは早計です。敬語ができないことによって被る不利益は、想像以上に大きいからです。「礼儀がなっていない」と思われた瞬間に、相手から、呆れられ、馬鹿にされ、見放され、敵対視される——こともなきにしもあらず。いいえ、信用や信頼を失うことすらあります。敬語は“できたほうがいい”というものではなく、仕事をする前提として“できなければいけない”ものなのです。
ご存知の方がほとんどでしょうが、敬語には「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」の3種類があります。
◆尊敬語:相手や相手の行動に敬意を払うときに使う
◆謙譲語:自分がへりくだることで、間接的に相手を立てる(敬意を払う)ときに使う
◆丁寧語:「使う→使います」のように、相手や内容を問わず、表現を丁寧にしたり、上品にしたりするケースで使う
敬語の使い方の中でもとくに多い間違いが、尊敬語と勘違いして謙譲語を使ってしまうケースです。では、ここから散見される誤った敬語の使い方について、例を挙げて説明していきます。