しゅはまはるみって何者?『カメラを止めるな!』の「ポンの人」

テレビには「世間の事情」が詰まっている! 遅塚勝一のお茶の間マーケティング講座

やっと花開いた『カメラを止めるな!』の「ポンの人」

このテーゼに1,000の言葉でなく、1つの作品で反駁してくれたと思う、正直ビックリした。偶数日隔日の21時のレイトショーのみというマニア対象の公開なのに、すでに本日10日は満席だという、なんとまぁ、完全「口コミ」ながら、いや、だからこその凄い人気。『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』もビックリだ。

作品では、嬉しいことに『しゅはまはるみ』が、生き生きと役にハマッていた。鬱屈を爆発させながら観客を納得させていた、過ぐる日「笑顔を引きつらせた」お母さん役の面影はどこにもなかった。や、面白い作品です。今度は俺がみんなに「来てよ!」と言いたくなった。・・・それが、ちょうど1年前、2017年11月の「ケイズシネマ新宿」だった。

あれから1年、それ以降の「カメラを止めるな!」の快進撃、社会現象はみなさんご存知の通り。映画のブレイクにより『しゅはまはるみ』に大きな変化が起こった。

舞台を中心として活動する女優さんには、「生活の糧」を得るためのCMタレントとしての活動は重要だ。
例えば「40代、メガネのお父さん」というCMキャラのイメージが決まると、オーディションに40代メガネのお父さん俳優が30人ぐらい集まるという、ちょっと「異様な光景」になる。

こうした、当たり障りのない、オーディション頻度の高いキャラの場合は、当然、役者さんたちが、お互い顔見知りのことも多く、「やあ、あなたもですか」なんて40代メガネお父さん同士で話してたりする。CMの端役の役者さんは、有名タレントのようにクール契約ではなく、製作費内からの予算なのでギャラは「安めの設定」になる。毎回オーディションとなるから、求められるイメージへの対応とコンディションキープ、CMタレントを「継続」するのは大変なのだ。

(C)ENBUゼミナール

さて、『しゅはま』が、オーディションに行って「カメ止めの″ポンの人″です」と言うとオーディションの雰囲気がガラリと変わった。「おおっ!」とスタッフが色めきだつのだ。オーディションの場で「あの作品のあの人」という効果はデカい。CMというものは、そういう「ブランド」に、特に弱いところがある。
こうなると人生、追風だ。『しゅはま』自身も、おのずとリラックスした演技が出来るようになり、オーディションの合格率も高くなった。

ある日のお母さん役のオーディションは「ポンの人」で現場が良い雰囲気になり合格、炒飯油のCMだという。『しゅはま』は、このCMで思い切り「母」を演じた、泣き、怒り、パラパラまで踊った。後日、そのCMは、昔お母さん役オーディションで笑えなくて落ちた「J-オイルミルズ」のCMだと知った。14年経ってリベンジできたのだ。

キャリアと年月は、いつのまにかひとりの女優を熟成させていた。これもひとつの『カメ止め効果』だ。
『しゅはまはるみ』は遅咲きの蓮華花だったけど、CMタレントとして「得難い花」になった。こんな時、このジャンルを長く眺めていて「良かった」とつくづく想う。

◇遅塚 勝一(おそづか かついち)
茨城県土浦市出身、1963年生まれ。大学卒業後、宣伝会議を経て、テレコム・ジャパンに入社。博報堂への出向の後、独立。CMディレクター、コピーライター、演出家として活躍中。 年間数多くのCM制作を手がける傍ら、ドラマ、映画、ラジオの企画や脚本にも携わっている。インタビュー・構成を担当した「時代とフザケた男」(小松政夫・著)が扶桑社より絶賛発売中。

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