永濱利廣の2019年経済展望「アベノミクス終了の可能性」

増税前駆け込み需要も、秋以降は低迷

欧米政治の不安定による日本経済の下押し懸念

来年の海外経済で最大の注目は、米国のねじれ議会の誕生である。トランプ大統領の経済政策は、減税やインフラ投資をはじめとした財政政策の計画があったが、ねじれ議会ではこの法案が通りにくくなることが予想される。このため、財政悪化に伴う米国の長期金利上昇リスクは軽減したといえるだろう。

トランプ大統領は、20年の大統領選で再選を目指しているが、財政政策で有権者にアピールしにくくなる。このためトランプ政権は、外交や通商政策でのアピールを強めることが予想される。特に、通商政策は大統領権限を発揮しやすい分野であり、議会の制御が効きにくいという意味では、更なる保護主義化のリスクは小さくない。従って、外交や通商政策において、トランプ大統領がどこまで過激な大統領令を発動してくるかも焦点となろう。

日本経済への影響としては、自動車の追加関税発動等で対米貿易黒字の大幅縮小を余儀なくされれば、経済成長率がかなり押し下げられることになろう。また、中東やロシアといった産油国等に対して更なる経済制裁の強化が実行されれば、原油価格の上昇を通じて日本経済にも悪影響が波及する可能性もある。

欧州でも、政治の波乱要因が目白押しである。いずれの国でも反EU的な世論の勢いが増しており、欧州政治不安への懸念が燻っている。英国ではブレグジット交渉が内憂外患となっており、ブレグジットを巡って英国保守党内でも意見が対立している。こうした英国の不確実性上昇は円高ポンド安要因となろう。

ユーロ圏でも、ドイツのメルケル首相の求心力低下や、イタリアの19年度予算案を巡る財政赤字拡大懸念でイタリア国債利回りが急騰している中、ECB(欧州中央銀行)の量的緩和政策が年内で終了する予定になっている。

従って、こうした欧米政治の不確実性の高まりが、日本企業のセンチメント悪化を通じて、来年の賃上げ抑制や設備投資先送り等から日本経済の下押し要因になりうることが懸念される。また、今後のトランプ氏の言動や欧州政局次第では、中国をはじめとした新興国経済が大きく悪化するリスクもあることには注意が必要だろう。

◇永濱 利廣(ながはま・としひろ)
第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト
1995年早稲田大学理工学部工業経営学科卒業後、第一生命保険入社。2005年東京大
学大学院経済学研究科修士課程修了、2016年より現職。あしぎん総合研究所客員研
究員、跡見学園女子大学マネジメント学部非常勤講師を兼務。内閣府経済財政諮問
会議政策コメンテーター、総務省消費統計研究会委員、景気循環学会理事。専門は
経済統計、マクロ経済分析。

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