福利厚生も有給もない?ネットフリックスから学ぶ人事制度のあり方

中島豊 新時代の『人事部』について考えよう④

【中島豊】新時代の『人事部』について考えよう

ネットフリックスの「人事制度」とは?

ネットフリックス(Netflix)は、全世界で最大級のオンラインストリーミングを提供している、成長著しい会社です。名前は当然、皆さんよくご存知だと思います。
そのネットフリックスですが、「人事」の世界では多くの大企業で広く受け容れられている人事管理の手法や制度を、次々と否定し「廃止」してしまったことでも有名です。

そうした制度の代わりにネットフリックスでは、「カルチャーデック」と呼ばれる社内バイブルによって「企業文化」を共有し、経営陣が社員に求め、同時に社員が経営陣に求めるべき「行動」を明示して、日常の人材マネジメントを行っています。

特にネットフリックスが「廃止」してしまったのは、一般に、社員の忠誠心を高めたり、退職しないように引き留めたり、やる気を上げたりする(と思われている)「人事制度」です。
例えば、この会社にはいわゆる「福利厚生制度」は存在しません
社員一人ひとりが自律して「自己実現」を求めるのであれば、制度として会社から提供される「手当て」や「厚生施設」などよりも、それにかかる費用を「全て給与」として支払い、それを原資に、社員は自分に必要な物を購えば良いと考えるのです。
また、この会社には「年次有給休暇制度」も基本的にありません。社員が必要な時に、必要なだけ休めば良いと考えるからです。

ちなみにネットフリックスのコンテンツ制作関連の年間費用は、2018年において1.4兆円に上ると言われれており、製作の現場には、時間・金額ともに人類史上でも稀にみる巨大な権限が「委譲」されていることになります。(制作費だけで見ると、日本の民放キー局5社の年間合計が4,500億円レベルです)

日本企業は「制度の整備」を優先

日本の企業で、このようなことができるでしょうか?
勿論、労働を巡る司法や行政の違いが、日米にはあります。しかし、そうした法的、事務的な問題以上に「人事制度好き」な日本のビジネスパーソンにとって、ネットフリックスの考え方は受け入れ難いものでしょう。

最近の「多様化推進」や「働き方改革」に対する取り組みを見ても、「新たな人事制度を導入しよう」とか「人事制度を改革しよう!」といった対応を「真っ先」に思いつくのが、典型的な日本企業の人事部というものなのです。

もしかすると「人事制度」とは、日本独自の考え方なのかもしれません。
実は「人事制度」と言う言葉、英語に訳すことが大変難しいのです。敢えて置き換えるならば「HR Policy and Practice」とか「HR System」などとすることが多いのですが、語感がいま一つ「しっくり」ときません。

「制度」とは、社員「全員」に対して結ばれる「約束」の集合体であるーーーと定義することができます。「これだけの成果を上げたら、このような報酬を与えましょう」とか「こんな働き方をしたら、こんな評価をしましょう」というような「約束事」を全部引っくるめて「制度」と呼ぶのです。

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