パナソニックがおびえる「あの巨大IT企業」の足音

シリコンバレー舞台「あえての未完成品」で家電の牙城を守れるか

日の丸家電の牙城を崩す「巨大企業」の侵食

先般、「あの巨大企業」が電子レンジの発売を発表した。何のことのないニュースで、見過ごされた方も多いであろう。この企業は本の販売から始まって、Eコマースで一世を風靡し、ものすごい勢いで業態を拡大している。

最近では消費者までの「ラストワンマイル」のロジスティクスを確保するために、ホールフーズ・マーケットという米国のスーパーマーケットを買収して話題なった。さらにその先の家庭内にも進出すべく、米国の宅配ベンチャー「ドアダッシュ」のように、生活必需品など定期的に必要な商品を自動配送するシステムや、留守宅でも一時的に施錠を解除して、配送品を家の内部に届けるシステムなど、画期的な仕組みを次々に提案している。

ここまで言えばもう「あの巨大企業」の正体はお分かりだろう。アマゾンである。

アマゾン本社外部にある球体型ワークスペース(photo by iStock)

アマゾンが今回、電子レンジの発売を決めたのは、より家庭内に「進出」するための戦略の一環だ。アマゾンで購入した食材や調味料などに適した料理を、アマゾン製の電子レンジが調理してくれるような仕組みを企図しているのであろう。

今後の展開を考えると、アマゾンは冷蔵庫やテレビなどの製造にも進出してくるかもしれない。そして、それらが無料で提供される可能性も十分にある。Eコマースで仕入れた「モノ」を消費者ニーズに応じて改良し、完全に消費するまで、一気通貫で「アマゾン製」を使ってもらうばかりでなく、リカーリングビジネスとして利益を得る戦略として理にかなっているからだ。

そうなると困るのが日本の総合電機メーカーである。彼らにとっては、「利益以上の何か」のために守っていた家電という牙城が、「アマゾン・エフェクト」により徐々に侵食されることになるのだ。

危機的状況に立ち向かうパナソニック

座して死を待つか、それとも家電から撤退するか。日本の総合電機メーカーにとっては、今までの延長線上での戦いでは大きなゲインを得られないのは明白だ。韓国、中国企業の追い上げやベンチャー企業の進出に加え、巨大企業・アマゾンまで参入してきた現状は、まさに「前門の虎、後門の狼」状態である。

このような危機的状況を打破しようと、「家電は家業」と自負しているパナソニックが動き始めた。

パナソニックの今までのビジネスモデルは、大量生産、大量販売になじむ製品の開発であった。しかし、だれにでも好まれる製品は過当競争になり、結局コスト競争に陥ってしまう。そこで、特定の人を念頭に置いた「尖った」製品をアジャイルに作り上げなければ、今後、家電でサステナブルに利益を上げ続けられないという発想に至ったようだ。そのための取り組みの一つが「パナソニックβ」である。

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