国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば、日本の総人口は2065年には8,000万人台にまで減少するといいます。この数字は、ちょうど現在のドイツ(8,200万人)と同程度。つまり、人口規模で見れば現在のドイツこそ、日本の未来を映した鏡であると言えるのです。(日独産業協会特別顧問 隅田貫)
総人口8,000万人台でも十分な理由
若い世代の「保守化」という話を良く聞きます。新成人の6割以上が「将来の日本に希望が持てない」と回答した、いう報道もありました。政府の世論調査においても、50年後の日本の将来について6割の方が「暗い」と見ているようです。
先行きにネガティブな意見が多いのにはいくつかの理由がありますが、大きな問題の一つとして「人口減」が挙げられます。国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口(平成29年推計)」によれば、2065年の総人口は出生率中位仮定で8,808万人、低位仮定で8,213万人になる模様です。2018年現在の人口が約1億2,700万人ですから、50年弱の間にざっと約35%も減少することになります。人手不足を補う存在として、AIに代表される技術革新に期待は掛かりますが、人口縮小への不安は拭えないでしょう。
だからと言って、悲観することはありません。ちょっと見方を変えてみてください。
そもそも人口が1億人以上いる国が世界にいくつあるか、ご存知でしょうか?WHOが2018年に発表した統計によると、目下の時点で13か国です。しかも、いわゆるG7諸国では、日本と米国だけなのです。
ですから、人口が仮に8,000万人台にまで減少するとしても、決して悲観する必要はないということをまずお伝えしておきます。
人口が少ないドイツはなぜ日本よりも生産性が高いのか?
総人口8,000万人規模の国と言えば、ちょうど現在のドイツが当てはまります。前回の記事(<有給取得率ほぼ100%、でも生産性は日本の1.5倍 ドイツ人の働き方と休み方>)でドイツ人の働き方について申し述べましたが、ドイツでは計6週間の有給休暇(病欠は除く)や限定的な残業が当たり前です。にも関わらず、国民一人当たりのGDPでは日本を上回り、労働生産性は日本の約1.5倍を記録しています。人口の多さとGDPや労働生産性が必ずしも一致しないことは明らかなのです。
では、人口8,000万人台のドイツはなぜ日本よりも高い生産性を上げることができるのでしょうか?ドイツでは、少ない労働時間で付加価値をいかに生み出すか、すなわち「省力化」と「合目的性」を重視する働き方が定着しています。
私自身の経験でも、日本の会社では毎日あった定期的な会議は、ドイツの勤務先では週1回だけでしたし、情報交換の会合は業務開始前の15分だけ。上司とface to faceで話す機会は2週間に一度、30分程度があるだけでした。非常に効率の良い働き方ができているという印象です。
「働き方改革」が叫ばれて久しい日本ですが、ドイツと比較するとまだまだ省力化できる部分も多いのではないでしょうか?