日本人はいつになったらノーベル経済学賞をとれるのか?

対象は米国籍かつ米大学関係者で、市場メカニズム中心の経済学ばかり

物理学や化学などと異なり、経済学にはいくつかの独立したパラダイム(あるいは科学的研究プログラム)が存在している。その競合性は顕著であり、日本でも市場メカニズム中心の経済学研究プログラムと、社会経済学(マルクス経済学などを含む)の研究プログラムの大きな対立がある。中国、台湾、ベトナムなどアジアの経済学も同じく多様化しているし、欧州でもフランスやイタリアなどではやはり「市場メカニズム中心の経済学」以外の経済学も盛んである。ちなみに「市場メカニズム中心の経済学」は、大学などのカリキュラムでミクロ経済学、マクロ経済学、計量経済学などで構築されている。

さらに国籍や性別でも偏りが顕著である。米国籍を持つ受賞者は全体の70%を超え、次点の英国が1割ほど、その他の国は3名から1名程度である。旧英領を含めて世界の13ヵ国で受賞しているが、日本からはもちろんいないし、アジア圏全体でもアマルティア・セン(インド)だけである。女性に関しては、エリノア・オストロムただひとりである。ノーベル賞に限らず、経済学における女性研究者の進出はきわめて遅れていて、女性経済学者たちを中心にして、この男性優位の経済学の在り方に批判が強く提起されているところだ。出身大学で見ると、ハーバード大学とMIT(マサチューセッツ工科大学)が二桁で、それにシカゴ大学が続く。もちろん米国の大学出身者が圧倒的人数を占める。

シカゴ大学
シカゴ大学(photo by iStock)

つまり、これまでのノーベル経済学賞の受賞者を見ると、国籍や大学は米国優位であり、男性に偏っている。さらにいえば研究プログラムが、「ミクロ、マクロ、計量」の教科書に掲載されているような業績か、それに関するものでの功績が(ごく一部の人物を除いて)受賞対象となっている。したがって、大雑把にいえば、日本で多くの支持者がいるマルクス経済学を専門領域にしている人や、私のように経済思想史的アプローチをとる人たちは、ノーベル経済学賞には縁がないのである。

このような特徴をもつノーベル経済学賞という競争の中で、日本人が受賞するのはやはりハードルが高いのは間違いない。日本で経済学研究者のかなりの人数を占める人たち(マルクス経済学、社会経済学、経済思想史の研究者など)は、まずいないものとして除外される。いわば初期条件でハンディを背負っているようなものである。

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