破壊すべき「西洋」を求めて À la recherche de valeurs occidentales à détruire

最初の場所では・・・その3

藤田嗣治がフジタとなり、パリを驚愕させることとなる理由

そこで一つその前に、準備体操をしておきたい。
というのも、準備体操にもってこいの題材を、上野で見つけていたのだ。

「デュシャン」展の後に、はしごして行った東京都美術館の「藤田嗣治」展である。
いつからだろうか、フジタ(1886-1968)は、私の愛惜してやまない画家である。かつては高価だった画集も買ったし、リトグラフもいくつか持っている。しかし、この没後50年を記念する大回顧展で、あらためて彼が、どれほど日本的な(非西洋的な)美学にもとづいて制作していたかを思い知った。それもまた彼が、ベル・エポックのパリの人々を驚かせた理由なのだったろう。

これは、西洋と我々との距離を知る格好のタネになる。(それにしても、いまこの稿を書いていて驚いた。デュシャンの生年が1887年。フジタが1886年。没年は二人とも1968年!この二人ほど、同時代性を感じさせないカップルもないだろう)

次回以降、フジタの「横たわる裸婦」などの作品を、その範としたマネの「オランピア」や、さらに、そのもとになったジョルジョーネの「眠れるヴィーナス」などを手掛かりに、フジタの絵に奥行きというか「背景がない」こと、つまり一種の「イコン」であることを紐解いていきたい。
そこから西洋宗教画の“華”ともいうべき「受胎告知」画の系譜をたどって、絵画が「異世界に開かれた窓」(遠近法で描かれた空間)であること、それは必然的に特定の場所と時間を持ち「固有の物語」を持つことを証していく。

この前提をみなさんと「共有」してこそ、初めてデュシャンが否定し、破壊したもの「核心」に、迫っていけると思うのだ。

連載第四回はコチラ

◇山下 茂(やました しげる)
NHKエンタープライズ エグゼクティブ・プロデューサー
1961年広島県生まれ。東京大学文学部国文科卒。1984年NHK入局。情報番組・経済番組などのディレクターを経て、美術番組のプロデューサーに。現在、NHKエンタープライズで、美術・歴史番組の制作に当たっている。

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