【独白】若手エリート地銀行員はなぜ辞めたか

退職を決意させた『変えられない体質』

私も最初から退職を考えていたわけではありません。しかし、銀行の現状を見ていくに、今後の企業体質改善は困難だと判断せざるを得ませんでした。地方銀行は上に挙げた問題を抱える中でさえ、自身の改革に着手できていないからです。

毎年の採用が50~100名であるのに対して、多い時では月に10名ほどが依願退職し、人員の足りない県内店舗からは悲鳴が上がっています。その一方で、先日も都内に新規営業所を開設する等、都市圏への傾斜は歯止めがかからず、問題の本質から目をそらそうとしているように思えます。

また、業務の効率化によって戦力減員を補おうとしていますが、現状の変化に、すぐに対応できるはずもありません。むしろ、業務効率化のための業務手順の変更が矢継ぎ早に行われ、変更内容についていけずに業務負担が増えるといった、短期的には本末転倒な状況です。既存の枠組みを破壊するクリティカルな方針転換はおろか、現場からの問題点の吸い上げすら満足にできていません。結果、銀行全体の軋みは末端へ重くのしかかり、私の所属していた営業店では長時間の時間外労働や休日出勤が常態化していました。人員の補填もなく、時間管理ばかりを要求される有様でした。

経営陣ばかりに問題があるわけではありません。私を含めた従業員に甘えがあることも事実です。部署の縦割りに甘え、一切営業活動を行わない事務担当者や、無駄な書類作成等に時間を使う融資担当者。改革を望まない者が組織の動きを鈍らせている側面もあります。

私が退職を決意したのは、銀行全体を覆うこの『変えられない体質』が、奥深くまで根付いていると感じたためです。今後、地方銀行には間違いなく激動の時代が到来します。その時までこの銀行で働き続け、その時代を生き残っていけるだろうか。そう自分に問いかけたとき、退職という考えが明確となりました。

「何故安定した銀行員という職を捨てるのか」と多くの方から問いかけられましたが、私の答えは変わりませんでした。銀行員が安定した職業だというのは過去の話、これからは銀行と心中する覚悟なくしては務まらないでしょう。

痛みと困難を伴う道に踏み出せない体質こそが問題?

ここまで私の体験を基に述べてきましたが、この問題は多くの地方銀行が抱えているものでしょう。

そもそも日本という国の経営者の多くには「サラリーマンから登りつめてトップに立った」という体験が多く、それがともすると「自分の任期」を全うするーー言い換えれば、それをやり抜けばオーケーという安易な価値観が心の憶測に潜んでいるのではないでしょうか。自分の銀行の例と、問題を起こし瀕死にあえぐ大企業の例はどこか似ています。

地方を第一とする本来の在り方を十分に踏まえ、その中で収益を生む可能性を最大限追求する。その上で場合によっては新たな業態への転換をも試みる。それくらいの痛みと困難を伴う道を選択しない限り、今後地方銀行は「生き残る可能性」すら見えてきません。

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