「トヨタ×ソフトバンク」の真の狙いは「MaaS」の海外協働にあり

「100年に一度」の大変革時代、世界に勝つための衝撃的提携

海外勢に対抗しうる「日本企業連合」

トヨタ自動車の豊田章男社長

そして3つ目が、日本企業の時価総額第1位のトヨタ自動車と、第2位のソフトバンクが手を結んだことだ。

従来、トヨタ自動車は強固な系列のもと、典型的な「自前主義」で生産の効率性の極致を目指して突き進んできた。しかし、「CASE」の時代に入り、すべての技術を自社内、系列内で対応するのが難しいと自認するようになった。その結果、系列内部の再整理や他自動車メーカーとの提携はもちろんのこと、モビリティサービスを提供する新たな企業とのアライアンスを積極的に行うようになってきた。ウーバー・テクノロジーズ(米国)やグラブ(シンガポール)への出資はその典型例と言える。つまり、トヨタ自動車は既に、「自前主義」から脱却し、「水平連携」に移行し始めているのである。

他方ソフトバンクは、ウーバー・テクノロジーズ、グラブ、オラ(インド)、滴滴出行(中国)という世界のライドシェアリングの乗車回数で9割を占める大手4社の筆頭株主となっている。ほかにもファンドを活用して、自動運転用の半導体会社アーム(英国)など、次世代モビリティに必要な企業に出資を行う、いわゆる「モビリティ群戦略」を行っている。

このような形でトヨタ自動車とソフトバンクは、それぞれ他社との連携を通じて次世代モビリティの足らざるパーツを埋め合わせているが、あくまでもトヨタ自動車はモビリティに、ソフトバンクはシェアリングに強みがあるということには変わりはない。つまり、今回の提携は、お互いの異なる強みを持ち寄り、「優位性」と「補完性」を高めた「日本企業連合」の誕生と言えるのである。

海外に目を転じれば、グーグルや百度(中国)など、次世代モビリティに注目している企業が巨額の資金を投じ、グローバルな連携を取っている。しかも彼らは「MaaS」社会の勝者となるべく、猛スピードで事業を進めている。「トヨタ自動車×ソフトバンク」の提携は、海外勢に対抗しうる「日本企業連合」となっているところに大きな意義を見出せるのではないだろうか。

提携の本質は「MaaS」の海外協働か

両社の提携で、今後の展開が順風満帆に進むかと言えば、必ずしもそうではないかもしれない。特に、「国内100地域で社会実装を進める」という構想に関しては、多少の軋轢が生ずる可能性が高いと思われる。タクシー事業者などの既存事業者が、来るべき次世代モビリティ社会を「自らの雇用や利益を脅かす存在」と捉え、非協力的な態度を取るかもしれない。法制度上の課題も少なくない。

ただし、米国や中国がこれらの課題の修正に真剣に取り組み、「MaaS」社会の実現に向けた動きを加速させている現実を忘れてはならない。

ソフトバンクの孫正義会長は、「今回の提携を第1弾とし、第2弾、第3弾も考えていきたい」と言及している。確かに、国内の社会実装で終わるのではなく、この2社が中心となって国内のみならず、海外展開をも考えていくべきだ。

日本の国内市場は少子高齢化、人口減少で今後、市場としての魅力が薄れつつある。ソフトバンクは海外のライドシェアリングをカバーしているし、トヨタ自動車は今現在でも国内よりはるかに多くの自動車を海外で販売している。海外展開を重要視するこの両社の動きから考えると、もしかしたら実は、国内よりも海外における「MaaS」の協働こそ、この提携の肝と考えているのかもしれない。

中村 吉明(なかむら・よしあき)中村吉明専修大教授
専修大学経済学部教授。経済産業省で産学官連携やイノベーションに関する実務と研究に携わり、環境指導室長、立地環境整備課長などを経て現職。著書に「AIが変えるクルマの未来」(NTT出版)など。

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