「トヨタ×ソフトバンク」の真の狙いは「MaaS」の海外協働にあり

「100年に一度」の大変革時代、世界に勝つための衝撃的提携

トヨタ自動車とソフトバンクが今月、新しいモビリティサービスに関する戦略的提携に合意し、新会社「モネ テクノロジーズ」を設立することを発表した。業界の枠を超え、国内外の自動車業界に衝撃を与えた両社の提携には、3つの意義があると考えられる。(専修大学経済学部教授 中村吉明)

トヨタ×ソフトバンク

自動車業界に激変をもたらす「CASE」

自動車業界は今、「100年に一度」と言われる大変革の時代を迎えている。その変化を引き起こしているのが「CASE」と呼ばれるトレンドである。

C(Connected:コネクテッド)
A(Autonomous:自動運転)
S(Sharing:シェアリング)
E(Electric:電動化)

その結果、自動車産業はものづくり中心からサービス中心に移行しつつあり、それを指す「MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)」という言葉も生まれた。今まさにクルマは「所有」から「利用」への変化の胎動の中にあるのである。

このような状況下で、トヨタ自動車とソフトバンクが次世代のモビリティサービス事業で手を組んだ。日本のトップ企業同士による提携には、大きく分けて3つの意義があると考えられる。

自動運転・シェアリング時代への備え

第一の意義は、この提携の目標設定が極めて的確である点だ。

トヨタ自動車とソフトバンクは、「CASE」の中の特に「A(自動運転)」と「S(シェアリング)」が融合する未来のモビリティを見据えている。シェアリングは既に、技術的には確立しており、導入するか否かは我々自身の判断によるものとなっている。

一方、自動運転は技術的に未熟で、制度的な整備もできておらず、加えて社会受容性も十分ではない。したがって、シェアリングと自動運転を掛け合わせた時代の到来は、まだ先になるかもしれない。

ただし、そのような時代は確実に来る。タクシーやバス、電車などの人流を根本から変える時代はすぐそこまで来ており、未来に備えて受け身を考えておく必要はある。今人手不足が大きな問題となっている物流業界も同様で、その人手の必要性が薄れてくる時代が到来するかもしれない。そのような時代への準備という意味で、この提携の目標設定は大変意義があるのである。

次世代モビリティ社会を「見える化」

ソフトバンクの孫正義会長

第二に挙げられるのは、最終目標に向けた第一段階のステップを明示している点だ。

前述の「自動運転×シェアリング」の社会は、今我々が暮らしている社会と大きな段差があり、今後、その社会受容性を高めていかなければならない。雇用は言うまでもなく、社会インフラ、生活環境も大きく変わるであろう。ある日突然、今と全く違う社会を迎えるということになれば大混乱となり、ハードランディングとなってしまう。したがって、「自動運転×シェアリング」の社会の実現に向けては、ソフトランディングするような準備が必要である。

その点、トヨタ自動車とソフトバンクは今回の発表の中で、目標に向けた第一ステップとして、地方自治体と協力しながら戦略特区などを活用して国内に100地区の「次世代モビリティ社会」を展開するとしている。このように、具体的な社会実装を試みることは、来るべきモビリティ社会を「見える化」し、問題点を洗い出すという観点で大きな意義があると思われる。

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