東京一極集中や地方の過疎化が問題視される中、地方自治体のあり方についても再考させられる時代に来ている。市町村別人口で日本一を誇る横浜市の林文子市長が考える、東京からほど近い政令市が担うべき「地方」の役割とは。(Soysauce Magazine Online編集部)
首都圏が担う日本全体の活力強化への役割
2017年の全国から東京都への転入超過数は約7万5000人です。横浜市から東京都への転出超過数も年々増加傾向にあり、人口の東京一極集中はますます加速しています。過度の東京一極集中を是正するためには、それぞれの地域の活力を維持し、東京に集中する「人」や「仕事」に新たな流れを作り出していく必要があります。
一方で、首都圏は日本最大の経済圏です。人・産業・情報・技術の集積を始め、多彩な文化資源を有しています。首都圏の自治体は、このメリットを経済活性化に生かすとともに、首都圏だけでなく、日本全体の活力の維持・強化につなげていく役割も担っていると考えています。
広がる東京との経済格差
東京都と他の地方自治体では、経済面での格差も広がっています。横浜市の人口374万人は東京都の約4分の1ですが、法人市民税は東京都の約15分の1。上場企業数も約17分の1と、圧倒的に少ない状況です。人口規模に見合った歳入を確保するために、改めて企業誘致などの取り組みを強化する必要があると感じています。
横浜市内にある事業所の99.6%を占める中小企業は横浜経済のエンジンですが、人手不足への対応が喫緊の課題です。2030年の生産年齢人口が17年と比較して約12万7000人(5.4%)減少することが見込まれる中、市の調査では、5割を超える市内企業が労働力不足を課題に挙げているのが現状です。
そこで横浜市では、市内経済団体と「人手不足・事業承継等プロジェクト」を立ち上げたほか、7月末には新たに、ビズリーチが運営する求人サイト「スタンバイ」に市内中小企業の特集ページを開設し、採用活動を後押ししています。また、高度で専門的な知識・経験を持つ人材の確保や育成支援のために、今年度から、建設業に関する資格取得に必要な経費への助成も開始しました。
産・学・官や金融機関などとの連携により、最新技術を活用した新たなビジネス創出にも力を注いでいます。「I・TOP横浜」(IoTオープンイノベーション・パートナーズ)と「LIP.横浜」(横浜ライフイノベーションプラットフォーム)の2つのプラットフォームを立ち上げ、「自動運転プロジェクト」や家の各所にIoT機器を組み込んだ「未来の家プロジェクト」などを進めています。生産性の向上や国内外の販路開拓にチャレンジする中小企業への支援も強化していきます。
市民生活を支え続けるためには都市の活力を生み出していかなければなりません。横浜市では、文化芸術創造都市の実現を都市の成長戦略に掲げ、ダンス・音楽・現代アートの3つの芸術フェスティバルに継続して取り組んでいます。来年のラグビーW杯や2020年の東京五輪・パラリンピックなどのビッグイベントも賑わいの創出や経済活性化につなげていきたいと考えています。