「組織なき幸せ」~人事管理3.0

中島豊の「新しい人事部」の作り方 企業は「人」でできている【その2】

第一回 「人事部不要論」再び はコチラ
同じ目的を持った人が、二人以上集まると「組織」が生まれます。
目的を共有しない人の集まりの場合は「組織」とは呼ばれず「集団」とか「群衆」と呼ばれます。

「組織」は目的を達成するための「土台(プラットフォーム)」です。そして目的を達成するためには「ヒト・モノ・カネ」といった「経営資源」が必要です。その中の「ヒト」つまり人材を管理していくために「組織」をつくることが、必要となるのです。

映画の「十戒」の題材になった旧約聖書に出てくるモーセは、奴隷となっていたイスラエルの人々をエジプトから脱出させます。紅海を渡って民族の安住の地を求めて砂漠を放浪している時、モーセはイスラエルの人々を率いて行くために、次のようなアドバイスを貰います。

「お前(筆者注モーセ)のしていることには無理がある。おまえ自身も、一緒にいるこの民も、きっと疲労困憊してしまうだろう。争いごとがお前には重すぎて、お前一人でそれを片づけることができない相談だからだ。(中略)お前は、すべての人の中から、神を畏れる有能な、信頼すべき人たち、利得を憎む人たちを選び出し、それらの人たちを千人の頭、百人の頭、五十人の頭、十人の頭として彼らの上に置くがよい。彼らがいつもこの民を裁くようにし、大きな争いごとのときはみなお前の所に.持ってこさせるのだ。」(関根正雄訳『旧約聖書出エジプト記』岩波書店 1969年pp56-57)

ここに書かれていることは「組織」の人に関わる原則の中でも、最も古いものであるといわれ、現代でも変わる事はありません。
一人の手に余る仕事は、組織の他のメンバーに分担してもらうことで、組織はその目的を達成することができます。これを「水平分業」と言います。この分業をするためには、各人が担当する「仕事を決め」なくてはなりません。

「職務定義書」がない日本企業

日本以外の国々では、欧米を発祥とする「職務主義」に基づいて、各々が責任を持つ職務を定義した「職務記述書」を作ります。一方で、日本では、そうした職務責任の範囲を曖昧にして、能力のある人が他の人から溢れた仕事をその場に応じて拾っていく「能力主義」によって、何とはなしに仕事の範囲を決めて行きます。

そのため「出来る人に仕事は集まる」「仕事の報酬は仕事」などといわれるのです。その結果、仕事が多い、つまり忙しい事は優秀さの「顕れ」であると思われるようになり、例え効率が悪く生産性が低くても、長時間労働を厭わず、むしろ歓迎するような「組織風土」が出来上がってきたのです。

仕事を分担する人が増えていくと、各々の仕事の進捗に横串を通しておく必要が出てきます。そこで、社員を監督するために「管理者」という別の職務を設けて組織を「階層化」する事で管理を行なうことになります。ところが、一人の管理者が管理できる範囲には限界があります。これを「スパン・オブ・コントロール」と呼びます。この範囲(スパン)は、だいたい5~6人程度であると言われます。

組織を加わっている人が多いほど、その階層は、一次階層、二次階層というように重層化されていきます。これを「垂直統合」と呼びます。

鉄道や電力のように「仕事のミス」が重大な危険を招くような業種の組織では、オペレーションに何重にもチェックを入れる必要があるために「垂直統合」を重視した組織構造を持つようになります。こうした「垂直統合」された組織を持つ企業は、安定的な競争環境においては、より高い業績を達成することができるという研究もあります。

反対に、変化の激しい環境に置かれた企業では、組織の階層を減らした「フラット化」された組織構造をとるようになります。「組織階層」が多いと、意志決定に時間がかかり、変化についていけないからです。

「事件は現場では起きている」という有名な映画の台詞がありますが、「フラット化」した企業では、現場に意志決定権限を委ねます。しかし、個々の現場で異なった「プロセス」や「対応」が生まれると、企業行動に一貫性を欠くような事態が生じます。
そこで、フラット化された組織では「組織階層」に替わる、新しい組織の「統合手段」が必要になります。それが「企業理念」「ビジョン」「使命」「価値観」といわれるものなのです。

強固な階層組織においては、社員には、強い「拘束感」や「圧迫感」があり、社員は「息苦しさ」を感じます。個人主義の強くなった現代の人びと、とくに若者はこうした圧迫感や息苦しさを「嫌悪」しています。

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