アイスブレークとしての自己紹介と受講の心構え
1997年に会社(現株式会社インヴィニオ)を設立し、大手企業の「人材開発」の仕事に携わるようになってから、はや20年以上が経過します。「人材開発」とは、わかりやすく言えば、その会社の方針や戦略を経営陣からヒヤリングして、それをもとに、その会社にこれからどのような人材が必要となるか「人材モデル」を描く。そして「必要な人材を、どのように育成するか」という「教育プログラム」を企画し、自分もそのプログラムの「講師」として実施に関わるという仕事です。
20年以上もこの仕事に携わってきて、色々な「発見」や「気づき」が得られましたので、それらを何回かに分けて発信していこうと思います。
読者のみなさんにとって、今後の「キャリア開発」や「能力開発」などの参考になればと思い、執筆の依頼を受けたのですが、これからの20年は、これまでの20年とは比べ物にならないほど早いスピードで世の中が変化すると思われます。ですので、この後連載していくことが、どの程度読者のみなさんの「世代」にとって役に立つかは甚だ不安です。この連載、常に批判的に読んで頂き、自分に「使えそうな」部分だけを上手に取り込んで頂ければ、著者としては幸甚です。
「動機」と「35歳からの変化」と「認知」がポイント
さて「20年間人材開発に携わってきて、何が『肝心』だと思いますか?」と問われたら、私は次の三点を挙げたいと思います。
【その1】人は、その人の「動機」に合っていないことをやっても成果を上げづらい。逆に「動機」に合ったことは、苦労なくやり続けることが出来るし、結果も出やすい
「動機」とは、その人の持つ「基本的欲求」のことで、生まれてから25歳くらいまでの間に固まると言われています。「動機」が変わりづらいということは「動機に無い能力は開発しづらい」ということも意味します。
例えば「好奇心」。新しい事業を考える時には「消費者は今何を求めていて、満たされていないニーズは何か?」などを考える必要があります。この状況で「好奇心」の薄い人に「好奇心」を持てと言っても、本人もどうしたら良いかわからないし「好奇心」の持ち方というものを教えるのはとても難しいのです。
【その2】人は35歳を超えたあたりから「変わりづらく」なる
全く「変わらない」わけではないのですが「変える」ことには、時間とコストがかかるようになります。先行きが不透明で「変化が激しい」現代において、何か知識やスキルを身につけてもすぐに陳腐化します。
20〜30代の若いうちに身につけるべきは、「変化を受容性する姿勢」と「自ら学び続ける習慣」であり、自分自身を「アップデート」し続ける勇気です。
【その3】社会人の能力開発において「認知」を変えることが、その人の「潜在能力」を引き出すきっかけとなる
例えば、「自分はビジネスパーソンとしてイケている、有能である」という「認知」をしていれば、改善しよう、変わろうという意欲は湧きづらくなります。
もちろん、その「認知」が正しければ何も問題はないのですが、第三者から見て「正しくない」と思えば、そのことに気づいてもらって、考え方や行動を改めてもらうことが社会人教育における重要な点であると考えています。
この「肝心」な三つのことを理解していただくためには、みなさんに少しだけ「行動心理学」の基本を知っていただく必要があります。