「オーダースーツ」と聞くと、生地やデザインを自由にカスタマイズして、自分だけの個性的なスーツができると思い込んでいませんか?間違いではありませんが、それでは本来のスーツの「核」が失われてしまう恐れがあります。スーツはビジネスパーソンにとっての最重要アイテム。今回は、スーツの着こなしからビジネスマインドを高めたいと考えている方のために、ゼロから分かるオーダースーツの選び方についてお話します。(日本ファッションスタイリスト協会講師 舩越さえ美)
オーダースーツ選びのルールを知っていますか?
はじめてのオーダースーツ選びでやりがちな失敗として、いきなりストライプ柄のスーツをオーダーしてしまうことが挙げられます。お遊びのカジュアルなシーンで着用するのであれば、ストライプだろうがチェックだろうが許されます。しかし、ビジネスエリートの集まる場でこのような柄物のスーツを着ていたら、とんだ田舎者、または育ちの悪い人間と解釈されかねません。
そもそも、スーツの起源を知っている人がどれくらいいるでしょうか?スーツは英国発祥で、王室のフォーマルウエアが簡略化されて出来上がったものです。日本の着物に様々な決まりがあるのと同様に、スーツにも独特のルールが存在します。
例を挙げると、
①ビジネススーツとして使っていい色は紺とグレーだけ
②ビジネススーツとして使っていい柄は無地だけ
③ビジネススーツのパンツの裾はダブルで仕上げる
④ビジネススーツにボタンダウンシャツを合わせるのはNG
⑤ビジネススーツに合わせる靴は内羽式のストレートチップ
ルールは他にもありますが、一度テレビのニュースで欧米の政治家がどんなスーツを着ているかをチェックしてみてください。ほとんどの方が上記のルール通りであることがわかるはずです。普段はTシャツ姿のマーク・ザッカーバーグも、米上院議員の公聴会ではルール通りの着こなしでした。
オーダースーツを着こなすメリット
英語の“SUIT”という単語には、動詞で「適合する」という意味があります。ゆえに、身体に合っていなければ、本来のスーツではないといえます。オーダースーツは、その人の体型ぴったりにつくられていてこそ“SUIT”なのです。
スーツの基本の形は、20世紀初頭の英国王・エドワード7世の時代からずっと変わらず、「テーラードジャケット」+「パンツ」です。基本の形が変わらないからこそ、差がつくのはサイズ感と素材。テーラーが紡ぎ出す1ミリ単位の匠の技が、既成品のスーツとは違ったオーラを与えてくれます。
オーダースーツのメリット
①ジャストサイズで着ることができる
②似合う色、柄、素材感を選べる
③リッチな気分が味わえ、自信が持てる
オーダースーツの種類
一口にオーダースーツと言っても、いろいろな種類があります。困ったことに、お店によって独自の呼び名が付いているので注意が必要です。おおまかには、3種類に分けているお店が多いです。
①パターンオーダー 袖丈、パンツ丈を合わせるだけ。納期は1週間~。
②イージーオーダー その人のサイズに一番近い、ゲージ服と呼ばれる基本のスーツに合わせてサイズ調整をする。衿やポケットのデザイン、裏地、ボタンなどが選べる。納期は2~4週間。
③フルオーダー 何もかも自由にオーダーできる。例えば「映画『007』でジェームス・ボンドが着ていたスーツがつくりたい」と言えば、そのとおりにつくってくれる。納期は一か月以上。
スタイルによって呼び名を分けているお店もあります。
①ブリティッシュスタイル ウエストシェイプして、胸板を強調した威厳のあるスタイル
②イタリアンスタイル お尻を強調したセクシーなスタイル
③アメリカンスタイル どこも強調しないストンとしたスタイル
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