なぜ賛成? 就活対策”ヒゲ教授”が語る「就活ルール廃止」を進めるべき骨太な理由

経団連・中西宏明会長の発言に端を発した「就活ルール」廃止の是非が多方面で議論されている。事実上形骸化しているルールの見直しを歓迎する声がある一方、就職活動の長期化や学業への影響を懸念する理由から、大学側を中心に反対論も根強い。全国の大学で就活支援を行う”ヒゲ教授”こと小澤明人氏に、教育現場の反応と「就活」の行く末について聞いた。(Soysauce Magazine Online編集部)

就活ルール

廃止当初は「就活しない学生」が増加?
――3月1日に会社説明会などの広報活動が、6月1日に面接などの選考活動がそれぞれ解禁される「就活ルール」の廃止が議論されていますが、学生の反応はどうでしょうか。
「つい先日、ある有名な大学で3年生向けの就活対策セミナーをやりましたが、予定していたより2倍も多い聴講者が集まっていました。どういうことかと思ったら、1、2年生がたくさん混じっていたのです。終了後に1年生から『この間の経団連の発表ですけど、どうなりますか』という質問も受けました。既に危機感のある学生も出てきました」

――2021年度入社からのルール廃止が実現すれば、今の大学2年生から対象になります。
「『ヨーイドン!』の解禁日がなくなれば、就活をスタートしない学生が増えると思います。これが一番の問題です。マスコミ報道を見ていると、『大手企業VS就活への意識が高い学生』という構図になっていますが、教育現場でずっと見ている感覚だと、そもそも『働きたくない』という学生も実は非常に多い。ただこうした学生も、スタート時期を決められれば否が応でも就活を始めざるを得ません。それが、ルールが廃止されると就活を始める時期も個人に委ねられるようになるので、真剣に取り組む学生が減ってしまうのではないかと考えています」

それでも「ルール廃止」に賛成なワケ

就活ルール――では小澤先生も就活ルール廃止には反対のお立場ですか。
「いや、最終的には賛成です。特にこのタイミングで一石を投じてくれたのは良かったと思います。なぜかというと、働くことに対する意識が変わるきっかけになるからです。今、日本人の生産性の低さが問題になっています。米国人の2分の1しかないというデータもある。働く意欲が低いまま社会に出る学生が多いから、早期離職率も非常に高い。一人一人が働くことに対するマインドをしっかりと持たないと、とんでもない将来になってしまう恐れがあるのです」

――なぜ働く意欲が低いのでしょうか。
「若い人たちが悪いのではありません。バブル崩壊後に生まれた世代は、カッコいいビジネスやカッコいい大人をあまり見ることがないまま、大人になってしまった。だから、働くということの捉え方、就労観が整っていないのです。そうすると、転勤や残業の有無といった就労条件で会社を選ぶようになる。それではもちろん仕事がつまらないわけですから、結果として早期離職者も増えてしまう。就職支援現場では既に、早期離職のスパイラルに陥ってしまっている方々が本当に多いのが実情です」

――働くことへの意識を変えるという意味で、今回の就活ルール廃止発言は大きな意味があるのですね。
「これは新卒だけではなく、雇用全体や大学教育、学校教育も含めた大きな枠組みでの問題なのです。働き方改革の議論が長く続いた中で、政府の施策としてこれが本丸だと思いこんでいる人が非常に多い。本当は個人の生産性を上げる『人づくり革命』こそが目的です。その前段としてブラック企業を排除したり、働く環境を整えたりという改革を進めているのです。でも最近の求職者たちは、働き方改革をセーフティーネットだと思い込んでしまっている。『安心できる会社に入ることが目的』というマインドです。これではたとえどんなに職場環境のいい会社に入ったとしても、『条件で選べば条件で辞める』。ないものねだりが始まってすぐに仕事がつまらなくなり、生産性には繋がりません。この部分を変えていく必要があるのです」

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