【松下幸之助】グローバル時代で生き残る3つの経営キーワード「変身」「コラボ」「駆逐艦」

対応上手な東レ、富士フイルム、ファミマ

日本企業史を代表する偉人・松下幸之助に側近として長く仕えた江口克彦氏が、ポスト平成の新時代でも通用する経営テクニックを紹介する連載「勝てる経営、負ける経営」。第2回のテーマは、変遷の激しいグローバル時代を生き抜くために、経営者が持つべき三つの考え方についてです。

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松下幸之助

 

グローバル時代こそ重視すべき「国民性」

前回は、松下幸之助さんに代表される「天下国家志向」の昭和的経営者と、米国流の「成果主義」がはびこる平成的経営者の違いについてお話しました。「国家国民」や「社会」を第一に考える経営から、自社の利益だけを追求する経営へと経営者の思考に変化が起きたことで、商品やサービスの質が低下し、あるいは、企業の不祥事などが相次ぐようになってしまったということです。

松下幸之助さんが亡くなって30年が経ちますが、その間、企業を取り巻く環境は大きく変化しました。その最たる例がグローバル化でしょう。ますます広がりを見せるグローバル時代に対応するため、私は経営者として考えるべき重要な要素が三つあると考えております。一つは「国民性」、二つ目は「普遍性」、そして「時代性」です。

やはり、日本人には日本人の、米国人には米国人の「国民性」があります。「世のため、人のため」という考えが根底にある日本人の国民性に対し、欧米人の中では「自分たちのために、自分たちでやる」という考え方が一般的です。このように、中東には中東の、アジアにはアジアの国民性、固有の精神文化が必ずある。それぞれに国民性が異なるのですから、どれもが正解なのです。

米ニューヨークのグランド・セントラル駅

そこでグローバル時代の経営者として大切になるのが、「国民性」というものを十分に理解する必要があるということです。米国や欧州で成功した経営手法をそのまま日本の土壌に持ってきても、風土が合わずに失敗してしまいます。グローバル化が進んでも、国家がなくなるわけではありませんし、民族が一緒になるわけでもありません。当然、国民性もその国の精神風土も変わらない。にもかかわらず、無理やり、人工的にまとめようとするとトラブルが起こります。畑が全く違う国に、別の国から種を持ってきてそのまま蒔いても、大抵は芽が出ません。

もっとも分かりやすい例が、欧州単一通貨「ユーロ」でしょう。「欧州」と一括りにしても、そこにはドイツ人なりの、フランス人なりのプライドがそれぞれあります。「財政破綻したギリシャと同一通貨では許せない」という心情になり、混乱が生じるのも無理はないでしょう。EUは、「国民性」を軽視してしまったのです。今後、EUが安定するためには、相当な時間を必要とするでしょう。

アジアに目を移しても同様です。例えば仏像。同じ仏教国でも、タイではどの仏像も金色に輝いているものが一般的です。しかし、日本人はむしろ風化するに任せて、色褪せ、古色蒼然となった仏像にこそ「わび・さび」を感じ、歴史を感じます。これらはそれぞれの「国民性」であり、それぞれの「国民精神」の発露です。ですから、自国の文化や考え方が良くて、他国のそれらが悪い、という話ではなく、それぞれの国民性、価値観をお互いに否定することなく、理解、尊重することが大切なのです。

自国の国民性、精神風土、価値観をしっかりと理解したうえで、欧米の考え方、グローバルスタンダード(=欧米基準)を「日本化」しながら、取り入れていくべきでしょう。日本的な経営に行き詰ったからといって、欧米的経営をそのまま持ってきては失敗してしまいます。

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