「5万円PC」ネットブック市場を席巻した台湾企業「エイサー」の日本戦略

■漫画に‶特化″し、平凡なタブレットが完売

次にご紹介するのは13年に発売された「Iconia A1」という7.9型のAndroidタブレットです。この商品は、iPad miniのように手の平サイズのタブレットですが、特筆すべき機能はなかった。文字を読むのに最適化された「4:3の解像度」がセールスポイントではありましたが、普通に売れば間違いなく埋もれてしまう端末でした。

そこでエイサーは、このタブレットを“漫画に特化した端末”として売り出しました。競合他社が同スペックのタブレット端末を「なんでもできる」という利便性を強調して売り出しているのに対し、「漫画が読める」という点にあえて特化したのです。結論から言いますと、「Iconia A1」は一度も値下げをすることなく完売した大ヒット商品となりました。

■開発段階からPR視点を盛り込み他社と差別化

この商品は、製造責任者が「漫画が読める」というコンセプトを打ち立てた段階から、PRの視点をふんだんに取り入れました。具体的には、電子書籍を展開している「e Book Japan」で使える5000円(税抜)の図書券を同梱したのです。これは、1000円にするか、3000円にするか、5000円にするかという議論がありました。最終的には5000円で決まったのですが、これにも根拠があります。値段にインパクトがあり、話題性があることはもちろんですが、「寄生獣」を始め、10巻ほどで終わっている人気漫画が多かった。したがって、5000円あればこうした人気漫画をまとめて購入できるだろうと考えたのです。電子書籍でまとめて漫画を読む体験をすれば、消費者は端末から離れられなくなるだろうという狙いもありました。

エイサー 砂流恵介

さらに、この端末には「マンガロイドZ」というわかりやすいキャッチコピーを付け、Android端末のキャラクターとしてお馴染みの、緑色のロボットが漫画を表示したタブレットを手にしているグラフィックも制作しました。このコピーとグラフィックはSNSで話題となり、あっという間に広まりました。どちらも製品開発の段階から、SNSでの拡散を視野に入れて考案していましたので、大成功でした。広告や宣伝に掛けられる予算が限られる中、SNSで話題になったことで、通常の広告以上の宣伝効果を得ることができました。

このように、製品を開発する段階からPR視点を入れていくことで、仮に製品自体の強みが薄くても、他社と差別化を図ることができるのです。

◆砂流恵介(すながれ・けいすけ)エイサー 砂流恵介
1983年、広島県生まれ。日本エイサー広報を経て、2013年に独立。柔軟な発想から様々な手法で商品、サービスをPRすることに定評がある。BtoC企業を中心にコンサルタントや広報支援を手掛けるほか、WEBメディアのライターやゲーム実況配信など多方面で活躍している。

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